事例1  「名前」 親しい他者との関係

入社後、配属された職場での作業日報から

「今日はじめて、私の担当のおじいさんから仕事を教えてもらいました。

とても、教えるのが上手でした。」 専Ⅱ卒 女性

生徒の皆さんへ あなたは、この文章を読んでどう思いますか。

1)「どうしておじいさんと書いたの?」  (彼女の聞き取りから)

名札の漢字読めなかった。教えてもらったけど忘れた。私、名前覚えるの下手(苦手)

おじいさんと書いたのそんなにいけないことかなぁ。先生まで呼ばれて注意されるなんて。なんで。?

2)卒業生や生徒たちへの説明から

おじいさんと書かれた上司の方が、人事に嘆かれたことから会社に呼ばれました。

上司の方は、いい関係ができていたと思っていたのに名前も覚えてもらえない、とがっかりされておられました。卒業生へは、名前は、その人の存在そのもの。名前を覚えることは、その人を理解する出発点。下手で終わらないでとお願いをしました。

 卒業生には、デジカメでミニアルバムを作り名前を覚える工夫をした先輩の話を紹介しました。

嘆かれた上司の方には、「今後こんな失礼なことがないように指導しました」と報告してお詫びとしました。

3)何年かのち、この事例から気づいたこと

この事例を読むたびに、どうして名前を覚えない(覚えられない)人が多いのだろうとずっと不思議に思っていました。  

つい最近、生徒たちが、会話の時に、相手のことを、簡単な手話表現で表すニックネームで呼んでいることに気付きました。ニックネームは親しい人、気を許した人に使うということもわかりました。そのときハッと気づきました。

あの時、もし、「おじいさん」という表現が親しみを表すニックネームだったとしたら・・・

上司の方に、嘆きではなく喜んでいただけたのではという思いに至りました。指導者として、子どもたちの理解に一層の努力が必要と痛感した事例となりました。 

事例1 完