<4月8日(金)第68回入学式>

 4月8日(金)、午後1時30分より、第68回入学式を挙行いたしました。以下に、入学式の式辞(概要)をご紹介します。

 桜舞い、草木の新芽が色鮮やかに照り映える今日の佳き日に、新入生及び保護者の皆さま方をお迎えし、第68回入学式を挙行できますことは、教職員一同大きな慶びです。保護者の皆さま方におかれましては、今日までご苦労を重ね、慈しんでこられましたお子様のご入学を、心よりお祝い申しあげます。誠におめでとうございます。

 東淀川高校は、昭和30(1955)年に設立され、今年度68年めを迎えます。平成29(2017)年度に、文系・理系と「看護医療」・「幼児教育」の二つのコースを設置する普通科専門コース設置校になり、この春、第三期生が卒業しました。また、同年度、日本語指導が必要な生徒選抜と、一般選抜を実施する学校になりました。今年度、日本語指導が必要な生徒選抜により、外国につながりを持つ16人の生徒が入学をしています。本校は、日本語指導が必要な生徒選抜で入学した生徒と一般選抜で入学した生徒が、ともに学ぶ学校です。本校では、互いに違いを認め合い、誰もが安全で安心な学校生活を送れるよう、生徒一人ひとりに寄り添った教育を進めてまいります。

 ただ今入学を許可しました242人の皆さん、入学おめでとう。皆さんは、新型コロナウイルス感染症の影響により、中学校等において、二年以上にわたって、学習、学校行事、部活動等の制限があったり、進路選択についても苦労をしてきたと思います。困難な環境のもとで、努力を積み重ねてきた皆さんに、心から敬意を表します。

 いよいよ本日から、東淀川高校第68期生としての高校生活が始まります。高校生になるということは、ある意味では、大人の階段を一段あがるということです。そのような門出の日だからこそ、皆さんにしっかりと理解をしてほしいことがあります。

 皆さんは合格発表以来、多くの方から「おめでとう」と声を掛けられ、嬉しかったことと思います。ただ、この喜びは皆さんの努力の賜(たまもの)であると同時に、保護者の方、ご家族の方、小中学校の先生方など、多くの方々の深い愛情と支えがあったことを、決して忘れないでください。また、今年も、残念ながら本校への入学が叶わなかった受験生がたくさん出ました。それだけに皆さんには、「この学校に入学できなかった人の分まで、高校生活を大切にする」という思いを持って、毎日を過ごしてください。

 入学にあたって、哲学者の鷲田 清一さんのことばをご紹介します。鷲田さんによると、ひとがことばを発するにあたっては、「だんまり」、「つぶやき」、「語らい」の三つの段階があります。

○まずは「だんまり」について

 鷲田さんは、「だんまり」の大切さを述べるにあたって、歌人で劇作家でもある、寺山 修司さんのことば、『現代人か失いかけている、のは、「話しあい」などではなくて、むしろ「黙りあい」だ』を引用します。そのうえで、鷲田さんは、現代社会において、ひとは、SNSなどを使用する際、ことばをいったん呑みこまず、反射的にメッセージを返してしまう。ことばをいったん呑みこんで、「だんまり」を決めこんで、自分なりにそのことばと折りあいをつけたうえで、ていねいにことばを発することがなくなってしまっていると、「だんまり」の大切さを述べておられます。

○つぎに「つぶやき」について

 「だんまり」の中から、ひとは、自分を理解したいと思って、誰に向けたわけでもなく、ぼそっと声出すことがある、それが「つぶやき」です。そのことばにふれた人が、自分にことばを返してくれる。そのときに「つぶやき」は次の「語らい」へと、もう一段ステージを上げていく、と述べておられます。

○さらに「語らい」について

 「語らい」の大事なところは、自分が他者と語らっていると、自分がどういう人間であるかという基盤が壊れそうになるところです。ひとはみんな生まれも違うし、どういう環境で育ってきたかも違う。「語らい」では、同じものを見ていても「このひとはこんな風に感じるのか」と思ったり、感じ方が微妙に違うことへの理解が増してくる、と述べておられます。

○最後に「語らい」の相手について、

 「語らい」の相手は、友達でも、街で知り合った人でも誰でもいい。ただ、できるだけ自分と同じ文化の基盤で生きていない人、生きてきた環境が離れている人、さらに、自分でどんどん関係を築いていける人と出会えるよう心がけてほしい、と述べておられます。

 新入生の皆さんは、改めて、高校生活について考えてください。異なる中学校等、異なる家庭環境、さまざまな文化的背景のもとで育ってきた皆さんが、東淀川高校に入学してきます。また、皆さんが高校を卒業した後、生きていくこの世界は、複雑化しており、自分と異なる考え方を持つ他者との出会い、異なる文化との出会いに迫られる世界でもあります。

 鷲田さんのことばを参考に、まずは他者のことばを「呑みこんで」みること、自分を表現するにふさわしいことばを「つぶやいて」みること、自分と異なる感じ方をするひとと積極的に「語らう」ことで、自らを変化・成長させてほしいと思います。

 そのためにも、高校生活において、学習、学校行事、部活動、社会活動等に積極的に参加して、自らを向上させてください。特に行事や部活動などにおいて人と繋がったり、心を通わせる体験を積んでください。また、互いに喜びや悲しみを分かち合える友人、一生の宝になる友をつくってください。友人と支え合うことを通して、人の気持ちがわかる、人の役に立てる、人の意欲を引き出せる、そのような人になるよう努めてください。そのうえで、何か困ったことがあれば、いつでも先生方に相談してください。東淀川高校には、生徒一人ひとりのありのままの姿を受け入れ、成長に導く先生方が沢山います。

 最後になりましたが、私たちが大切に考えるのは、お子様のかけがえのない未来です。保護者の方々と学校、そして地域社会が連携し、お互いの信頼関係のもとで教育に取り組むことが、子どもたちの健やかな成長を促す唯一の方法だと考えています。ご心配なことがございましたら、いつでも遠慮なくご相談ください。

 私たち教職員一同、皆さま方のご期待に添うよう力を合わせ、242人全ての生徒が安心して学校生活が送れるよう、一人ひとりに寄り添いながら、「入ってよかった。行かせてよかった。」といわれる学校づくりに邁進してまいります。何卒、ご理解とご支援をお願い申しあげ、式辞といたします。

 

 令和四年四月八日 大阪府立東淀川高等学校長 森瀬 康之