平成29年度 1学期終業式あいさつ

 一学期の終業式にあたり、みなさんに言葉を送ります。キーワードは共感性です。

 4月に18年ぶりに金剛高校に戻ってきて、金剛高校の生徒の「よさ」を再確認しました。金剛高校の生徒は、心優しく、温かく、仲間を大切にします。クラス開きにはじまり、遠足、そして体育祭。特に体育祭では、チームのために一人ひとりが、思いに応えようと、力の限り頑張り、感動を与えてくれました。

 金剛高校の生徒は、人の思いに応え、人の痛みを分かろうとする心を持っています。この心を共感性と言います。こうした金剛高校では、いじめのような、人間を傷つけ、踏みにじることは起こらないと、確信しています。

 人の思いに応え、人の痛みを分かろうとする、共感性が金剛高校の生徒の「よさ」です。このことを誇りに思い、胸に刻んで欲しい。

 しかし、この共感性はそれだけでは危うさを持っています。

 7/13(木)に一年生の薬物乱用防止の授業でVTRを見ました。職場で生き生きと働いていた女性が、覚せい剤中毒になり転落死する内容でした。その女性が覚せい剤を使用するきっかけが、同級生からの誘いでした。彼女は、最初同級生からタバコに似た葉っぱの吸引を勧められた時、「ヤバイ」のではないかと断りました。しかし、次に同級生が言います。「お前は、高校の時から、真面目だった。」「会社を半年で辞めて、無職のオレのことなんか、どうせ見下しているんだろ。」「だから、オレの誘いも断るんだろ。」

 このシーンを見て、とても考えさせられました。金剛高校の生徒は、果たして断りきれるのだろうか。

 彼女は同級生にそう言われて困ったに違いありません。彼女は「会社を半年で辞めるなんて、辛抱足らずのロクデナシ。危険なものに手を出すのは、人間のクズだ。」と思わない、友だち思いの心温かな人間、共感性に優れた人間だったに違いありません。こうして、彼女は、同級生をいたわるあまり断りきれず、吸引してしまいます。

 彼女に何が欠けていたのでしょうか。きっぱりと断る勇気や、誘惑を断ち切る意志力でしょうか。

 そうではありません。その葉っぱが、違法薬物であり、一度吸引すると、依存性、耐性、再燃性があり、自分の意志ではどうにもならない危険性があるものであるとの正しい知識がなかったのです。

 この違法薬物の危険性に対する正しい知識があれば、友だち思いの彼女は、自分が吸わないだけではなく、友だちのためにも、きっぱり止めるよう、行動したに違いありません。

 共感性は貴重なものです。しかし正しい知識がない共感性は、その場の雰囲気や人間関係に流され、危険で間違った行動に人を導く危険性があることを知っておいて欲しいのです。

 私は6月に授業見学を行いました。授業で教えられている内容の大半は「今、すぐ」「役に立つ」ものばかりではありません。テストや受験のために覚えたり、習得したりするものの方が多いはずです。しかし、間違わないで欲しいのは、「今、すぐ」「役に立たない」から、知識は不要なのではなく、教養として様々な知識や技術を身につけることが、あなた方の人間の幅を大きくするということです。そして自らの思い込みだけで行動するのではなく、何かあれば調べたり、訊いたりして、正しい知識に基づいて行動しようとする姿勢を育むということです。

 私は共感性が人間とって最も大事な能力の一つだと思っています。共感性に優れた金剛高校生だからこそ、自分を大切にするだけではなく、仲間を大切にするためにも、正しい知識や技術を身に付けようとする「学び」の姿勢を持ち続けて欲しいと願っています。これがあなた方への私からの言葉です。

 最後に、明日から夏期休業に入ります。3年生は、この夏が進路実現に向けての正念場になります。2年生、1年生のみなさんも、限りある高校生の夏休みを充実したものにして下さい。日ごろは学校があり、できないことにチャレンジして下さい。たとえば3年生なら、何時間ぶっ通しで勉強できるか、一人であるいいは友だちとチャレンジしてみるのもいいです。また1・2年生で部活動している生徒は、精神力や体力の限界にチャレンジしてみてください。また、部活動に入っていない生徒でも、たとえば一日一冊本を読んでみよう、好きな特技をとことんやってみよう、など主体的に何かの目標を定めてチャレンジしてみてください。せっかくの夏休みを生ぬるく、ダルイ、ヒマなものにしないで下さい。

 この夏、自分の成長にとってプラスになる経験をして、二学期の始業式には、みなさんが元気な姿で登校できることを願っています。

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