JUMP金剛78号「経験」と「学び」の「深化」

 36期生のみなさん、卒業、おめでとう。これからそれぞれの進路に向けて旅立つみなさんに、餞の言葉を贈ります。

 金剛高校は、一人ひとりの生徒をかけがえのない人格として尊重することを核として、多様な他者と繋がり関わる「多様性の尊重」と、確かな学力の獲得及び進路保障を通じてその力を地域社会で生かす「地域性の重視」を特長とする学校です。金剛高校での「経験」と「学び」はこの二点に収斂されます。この「多様性」と「地域性」を重視する「経験」と「学び」の中で、生徒は成長し「よさ」を育みます。今後グローバル化、AIなどのテクノロジーが急速に進化する社会において、「他者との協働」「主体的な社会参画」の力が必要とされる中で「多様性」と「地域性」は大きな意義を持ちます。

 金剛高校の生徒は「真面目」で「素直」、そして「優しく」、「人間を大切に」します。よって、金剛高校の生徒は「いじめ」や「差別」を絶対に許しません。これは金剛高校の生徒の誇るべき特長です。この「よさ」を今後とも持ち続けて欲しい。その上で、この「よさ」を更に「深化」させるために、私の想いを述べます。

 まず「真面目」さですが、これは人や事に誠心誠意向き合い関わろうとする、人間として大切な姿勢です。しかし、懸念する点は「真面目」さのみで、正しい知識や広い視野が欠けると、その「真面目」さは「生真面目」となり、思い込みが強いだけとなり、周りや自分自身をしんどくさせ、「事を成就」させません。「真面目」さに加え、正しい知識や広い視野に基づく、自らや情況を冷静に見極める力を持ち、「事を成就」させることを望みます。

 次に「素直」さですが、疑いを差し挟むことなく、指示や指導に従うことは、学びには欠かせない大切な姿勢です。しかし、その上で「騙されやすい」「お人よし」にならないためにも、一回り位相を変えて「信じるために疑う」姿勢、クリティカルな姿勢、何でも鵜呑みにするのではなく、十分に吟味してから判断する姿勢を持って欲しい。特に今後ますます深刻化する、ネット上の無責任な情報や、プロパガンダ、情報操作による扇動などに踊らされないためにも、情報に対するリテラシーやクリティカルな姿勢を培い、自らの「経験」に則した「判断」の下、行動する力を培って欲しい。

 さらに「優しさ」です。金剛高校の生徒は人に優しく温かい。この点も金剛高校の生徒の誇りうる「よさ」です。その上で敢えて言います。この優しさや温かさが、自分や他者への「願い」や「想い」のない場合、もめごとや対立を避けるためだけのもの、当たらず障らずに無難にその場その場をやり過ごすためだけのものに転落してしまう危険性があります。誤解しないで欲しいが、強圧的になれと言うのではありません。「願い」や「想い」のぶつかり合いの中で、他者は実在性を持つのであり、つながりの太さや深さは、こうした「願い」と「想い」のぶつかる関係性の中で生まれるのです。このことを念頭に入れて、真の「優しさ」を持った人間となって欲しい。

 加えて「人を大切にする」です。積極的な表現で言えば、先ほどの真の「優しさ」を持ち、人と関わることです。しかし、その上で、ここで二点、「深化」のために付け加えます。一つは「怒り」です。「人を大切にする」ことは逆から言えば、人間の尊厳を否定し、人をモノや部品として扱う、できる・できないで人の存在価値を決めつけるものに対して、「怒り」を持って立ち向かうことです。みなさんには、恐れず、屈さず、勇気を持って、「いじめ、ハラスメント」等の人権侵害や「差別」に対して、「No」と言える人間であって欲しい。二つ目は「社会」への視点です。「いじめ」や「差別」を行う人間に「No」と提起することは大切ですが、問題を個人の責任や、心の問題などに矮小化してはなりません。人間から人間性を剥奪する社会に対する「変革」への視点が必要です。私たち一人ひとりが、人間が尊厳を有した存在として尊重される社会の実現のため「政治的教養を育み」、社会に参画する主体であることを、今一度確認して欲しい。

 「よき日」はあなた方が「願い」と「想い」の中で切り拓くのです。

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