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平成30年度 進路指導部冊子『進路』より「生きざま」に学び「大切なもの」を見つめて

「進路とは、進学や就職先を決めることだけではなく、将来、自らがどのように社会に関わり生きて行くかを考えることである。」

私の進路は、父親の「生きざま」に大きな影響を受けました。私の父は尋常小学校を出て、すぐに鋳物工場で働きました。祖父が莫大な借金を残して死に、下に小さな弟や妹が5人もいる中、進学をあきらめ、働きに出たのです。父は煤まみれになりながら、溶鉱炉で働いていました。汗のかき過ぎで脱水症状になったり、火の粉で失明しかかったこともあります。

父は決して、好き好んで鋳物工場に勤めたのではありません。「大切なもの」、父の場合は祖母や兄弟、結婚してからは私たち家族の生活を守るために、身を削りながら働いたのです。父は学歴がないことで悔しい思いもしました。しかし一方で鋳物の知識や技術を独学で学び、熟練工としての誇りを持って働いていました。

私はそんな父の背中を見て育ちました、私が中三の時、進路の話になりました。その時父は「まさやには、お父ちゃんのように身を削るような仕事にはついて欲しくない。」と言いました。子どもには辛い思いをさせたくないとの思いから出た重い言葉でした。

私の進路は、父の煤だらけになって「働く姿」と「学び」への思い、技術者として「誇り」が大きく影響しています。

私は教師を職業として生きてきました。私は父が「大切なもの」のために、職場で身を削って働いてきたような「真剣さ」で、生徒に向き合い、関わっているのか、と絶えず問いかけてきました。

職業に貴賤はありません。どんな仕事も「貴く」そして「きつい」のです。できれば、自らの資質・能力・適性が生かせる職業に就ければと思います。しかし、そうでなければ働けないというのは、間違いです。人は「大切なもの」のために、たとえ身を削ってでも働き、そんな中でも誇りを失わずに生きていくことができるのです。

多様な「生きざま」に学び、「大切なもの」を見つめ、「進路」を切り拓くことを願っています。

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