令和元年度二学期終業式式辞

みなさん、おはようございます。今日はこれから全府立学校で見られている「めぐみ」を視聴します。

みなさん、このDVDを見て、どのような感想を持ちましたか?

「幸せに暮らしている横田恵さんを拉致するなんて、許せない」

「めぐみさんの父親、母親の気持ちを思うと、とても悲しく、腹立たしい」

こんな感想を持ったのではないでしょうか?

私も、そう思います。「こんなことは許されてはならない。」と思います。

では、どうすれば、こんな人権侵害をなくすことができるのでしょうか?

ところでみなさんの中には、

「北朝鮮は悪い国だから、韓国・朝鮮の人とは付き合いたくない。」

「韓国・朝鮮の人は悪い人ばかりだ。」と思った人はいませんか。

それは、「日本はかつて、中国や韓国を侵略したのだから、日本人は信用できない。」

あるいは、「日本はかつて真珠湾を攻撃し、多くのアメリカ人を殺したのだから、日本人を皆殺しにしてもいい。」と同じ発想です。

拉致問題という人権侵害は、国家による人権侵害です。韓国・朝鮮にルーツを持つ人たちが個人的に行ったのではありません。加害者は国家、被害者は市民なのです。よって北朝鮮と言う国家が行った人権侵害は決して許されてはなりませんが、だからと言って韓国・朝鮮にルーツを持つ人々に対して、憎しみを向けることは、お門違いだということをまず押さえて欲しい。

 朝鮮と日本の交流は、歴史的に深いものがあります。そのことも知っておいてください。秀吉の朝鮮出兵や近代の韓国併合を除き、とても友好的な関係でした。たとえばこの近くの錦織や土師ノ里は、朝鮮からの渡来人が多く住んでいました。「ナラ」という言葉は朝鮮の言葉で、「国」という意味です。また、江戸時代というと鎖国によりオランダとだけ交流していたと思いがちですが、実は江戸時代、朝鮮通信使を通じて朝鮮と日本は交流しています。その絵馬が近くの「喜志の宮」に奉納されています。日本と朝鮮の人々の交流が、国と国の利害対立を越えて、はるかに深く、強いものがあったことを知れば、北朝鮮という国家による人権侵害によって、この長く深いつながりが損なわれることはおかしいと分かります。

 さて、最初の問いに戻ります。拉致問題のような国家による人権侵害は、どうしたらなくせるのか?

 みなさんは、「世界人権宣言」を知っていますか?第二次世界大戦が国家間の利害対立の上に引き起こされ、ユダヤ人の大量虐殺など、人権を軽視し多くの人命が奪われたことに対する深い反省から、国際連合が1948年の総会で採択したものです。そこでは、国家の利害を超えた人権の普遍性を全世界のあらゆる場所と地域で行き渡らせること、これが国家による人権侵害を防ぎ、戦争のない平和な世界をなくすことになるのだとの強い決意が宣言されています。この後、おおさか人権情報誌「そうぞう」が配られますが、「拉致問題に関心を」持ち、人権尊重の立場に立って国家による人権侵害を決して許さないことを確認してください。

 私たちが具体的になすことは、国家による人権侵害はもとより、あらゆる人権侵害に対して、まずは、それが人権侵害であることを見抜く力を持つことです。その上で被害者の立場に立って、しっかりと「No」「許さない」という姿勢・態度を持ち行動することです。そのことが拉致問題も含めた、様々な人権侵害をなくすことにつながることをしっかり確認してください。

 さて、3年生のみなさん、あなた方は、人権侵害を見抜き、それに立ち向かう力があります。あなた方が、人権侵害を許さない行動を実際に取ったことは、私はこの上なく、頼もしく、うれしく思いました。これからもあらゆる人権侵害を許さない人間として、行動して欲しい。

 次に2年生のみなさん、沖縄修学旅行、決して忘れることができない素晴らしいものでした。みなさんの行動・態度に私も元気をもらいました。大宜味村の人たちの温かさ、たくましさに応える意味でも、沖縄の人たちの反戦・平和への思いを今後も大事にして下さい。

 さして1年生のみなさん、先日のキムさんの講演を思い返してください。金さんが学生の頃の、本名も名乗れず、就職や結婚において差別があった社会は、多くのマイノリティの人々が立ち上がりによって変わったのです。社会は変えていくことができます。どうかあなた方一人ひとりが、正しい知識を持ち、様々な人々と連帯して、多文化共生社会の担い手になって下さい。

 最後に、みなさんには年末・年始、くれぐれも安全には留意して、有意義に過ごして下さい。そして年明けには気持ちも新たに全員、無事にここに集まることができることを願っています。

令和元年12月24日

校長 上本 雅也

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