第47回卒業式 式辞

 ただいま卒業証書を授与いたしました、第47期生・224名の皆さん、卒業おめでとうございます。そして、本日ご列席いただきました保護者の皆様、立派に成長されたお子様のご卒業、本当におめでとうございます。これまでお子様の成長を暖かく見守ってこられたなかで、時にはご心配やご苦労もあったかと存じます。本日、卒業を迎えたお子様の姿をご覧になり、喜びもひとしおかと拝察いたしますと共に、今までのご努力に心から敬意を表し、お祝い申し上げます。

 私たち長尾高校の教職員にとりましても、お預かりしておりました大切なお子さまを、このようにお返しすることができ、これに勝る喜びはございません。改めまして、これまで本校の教育活動に対して、深いご理解とたくさんのご支援ご協力をいただきましたことへ、深く御礼を申しあげます。

 また、本来はご来賓としてご臨席いただく予定でした方々からをはじめとして、卒業生へのお祝いのメッセージをたくさんいただいております。高いところからではございますが、本校教職員を代表いたしまして、御礼を申しあげます。

 今日ここに、長尾高校を旅立ち、それぞれの道を歩んで行かれる卒業生の皆さんへ、今後の人生において幸せが訪れることを願い、私の思うことをお話いたします。 

 学問・芸術・スポーツなど社会の様々な分野で優秀な業績や成果を上げた人々に対して、「どうすればあなたのようになれますか?」とインタビューで尋ねることがよくあります。一九八七年に医学・生理学分野でノーベル賞を受賞した科学者である利根川進博士の答えは、「隣の研究室をのぞくこと」でした。

 ノーベル賞に結びついた利根川博士の研究は、そのアイデアを証明する実験方法が思いつかずに苦労されていました。ある日、同じ建物にある別の研究室に行くと、今まで見たこともない実験装置が置いてありました。自分の研究に夢中のあまり、すぐ隣の部屋の研究のことなど全く知らなかったそうです。利根川博士はその実験装置にとても驚き、そして、これを応用すれば自分のアイデアを証明する実験ができるんじゃないか、とひらめいたそうです。最先端の学問研究分野では、研究者がいわゆる「オタク」状態に陥ることはしばしばあるそうです。iPS細胞の研究で有名な山中伸弥博士も、同様なことを述べておられます。

 卒業生の皆さんにも、これからは就職先や大学・短期大学・専門学校で、より専門性の高い仕事や勉強が求められます。そのために必要とされる知識や技術を身につけることが重要です。その中で、時には仕事や勉強がいやになったり、行き詰ることもあると思います。その時は、少しだけ「隣のこと」に目を向けてみてください。これを「好奇心」と呼びます。

 情報技術が発達した今の社会では、好奇心を満たす方法や手段にあふれています。SNSなど大いに活用してください。それと共に、誰かと直接話をする、というコミュニケーションをぜひ忘れないでください。先ほど紹介した利根川博士も、仲間の研究者と何気ない会話から、研究を続けるヒントをたくさんもらった、と話しておられます。

 私は、卒業生の皆さん一人一人が、自分自身の「好奇心」を大事にして、そして大切に育てていくことを願っています。それは、この「好奇心」が、皆さんの人生を通して「学び」を続ける最大の力になると思っているからです。また、好奇心は、手入れを怠るとしぼんでしまいます。その手入れのために、「学ぶ」ことが必要です。

 21世紀のこれからの社会は、テクノロジーの発達、国際化の進展、地球環境の変化などから、「激動の時代」だと言われています。その中で、皆さんが自分の思い望む、悔いのない人生を送るためには、時代の変化に対応できる「学び」が必要だと思います。

 「何のために勉強するのですか?」と質問されたら、「自分の好きなことができる人生を送るため」と私は答えます。皆さんがどうか、「学び続ける人」であることを願って、私のはなむけの言葉といたします。

 結びにあたり、第47期卒業生と、そのご家族の皆様方の、今後の人生におけるご幸運を、心からお祈りいたします。どうか、いつも笑顔を忘れずに。ご卒業、本当におめでとう。

令和4年2月25日

大阪府立長尾高等学校 校長 石井研吉