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学校長の式辞集詳細

2020年度 2学期終業式 式辞


今日は、宇宙の話をしたいと思います。皆さんも知っていると思いますが、先日小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へ帰還しました。 「はやぶさ2」は2014年に鹿児島の種子島宇宙センターから打ち上げられて、小惑星「リュウグウ」をめざし、そして「リュウグウ」の石や砂のかけらを採取し、6年間50億kmの旅を終えて、地球に帰ってきたんですね。
 この小惑星「リュウグウ」に着陸して、石や砂を採取する大変な作業の内幕がテレビでやっていました。非常に面白かったので紹介します。
 着陸する直前に初めて分かったのですが、小惑星「リュウグウ」の表面は、大きい岩や小さい岩にびっしりと覆われていて、平地がほとんどなかったんですね。はやぶさ2が着陸できそうなスペースがわずかしかなかったんです。そのスペースにピンポイントで着陸するには、地球上で言うと上空20KMの高さから甲子園球場のマウンドに着陸するような精度が求められるらしいです。まずは1回目の着陸に成功しました。わずか1ⅿの誤差だったそうです。この1回目の着陸で、リュウグウの表面の石や砂をかなり採取できたんです。
これだけでもすごいのですが、「はやぶさ2」の今回の最大のミッションは、小惑星の地面の中の石や砂を持ち帰ることだったんです。地面の中にある石や砂は表面のものとは違って、放射線や熱にさらされていないので、太陽系が生まれた約46億年前の姿を保っているとのことで、地球がどうやって生命を育む環境になったのか、ヒントが得られるらしいんです。
 そのために、もう一度リュウグウから飛び立って、少し離れたところから、火薬を仕込んだ衝突装置を「リュウグウ」に撃ち込んで大きな穴をあけ、そこに2回目の着陸をして、地中の石や砂を採取するというものです。
 ところが、ここで問題が起こります。JAXA所長さんが突然こう言うんですね。
「砂や石はもう採取できた。はやぶさ2が損傷するようなリスクを冒してまで、2度目の着陸をする必要はない。地球に戻らせよう。」 経験豊富な所長は、負担のかかる2回の着陸の衝撃に耐え切れないで、はやぶさ2が爆発してしまいかねないと考えたんですね。
宇宙探査の厳しさを痛いほど知る所長が、2度目の着陸に反対したんですね。チームは動揺しました。このまま帰還したら、「はやぶさ2」は地表の砂を採っただけで大きな進歩とは言えない結果で終わってしまいます。しかし、はやぶさ2が万が一破損してしまったら元も子もありません。どうしたらいいのか。何とか無事に地中の石や砂を採取する方法はないものかと考えました。
そこからのチームの動きが素晴らしかったんですね。50人全員で分担して、様々なケースを想定して、悪条件が重なったシミュレーションを100万回繰り返したというんです。あらゆる不安材料を一つずつ丁寧に解決し、どんな状況でもはやぶさ2本体を失わないと確信できる手順が出来上がったんですね。
 そして4カ月後、ようやく所長のGOサインが出ました。「はやぶさ2」は爆発物を「リュウグウに打ち込み、直径約50m、深さ1.7mの穴をあけ、その場所に2度目の着陸を成功しました。目標地点からのずれはわずか60センチだったんです。チーム責任者は「チーム全員が結束して取り組んだおかげです。」と言っていました。所長が安全策を提案しましたが、チームが一丸となって困難を乗り越え、素晴らしい結果を出してくれました。重苦しい話題が続く日本を、元気づけてくれました。そういう話なんですね。
チームワークって本当に素晴らしいと思います。困難なことがあっても、厳しい状況に陥っても、みんなで力を合わせたら、不可能なことが可能となるかもしれない。そんな勇気を当たえてくれた素晴らしい出来事でした。チームワークが生み出す不思議な力、これを皆さんにも覚えておいてほしいと思います。


令和2年12月26日
大阪府立守口東高等学校
校長 富永 誠






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