震災ボランティアレポート in 大槌町 その1

夜が明けると昨夜来の雨がは上がり曇り空。お昼ごろから日が射してきました。

大阪に比べると非常に涼しく、肌寒いくらいで、遠い北の地に来たことを感じました。

14時間マイクロバスに揺られ、9時10分に岩手県大槌町の大槌ベースに無事到着!

お二人の運転手さんの安全運転に感謝。

 

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東北自動車道を降りてバスの窓から見る岩手県の内陸地域は山と田園風景が広が

る非常にのどかで懐かしささえ感じる美しい地域でした。しかし、太平洋岸に移動す

ると風景は一変しました。

釜石市の市街地から海岸線を走るようになると、かつて市街地や住宅地であったの

だろうと思われる地域に建物が全くなくなっていて、家やビルの基礎だけが一面に広

がる異様な風景が目に飛び込んできました。傍らには、うず高く積み上げられた瓦礫

の山が片づけられないまま川岸や海岸線などあっちこっちに点在しているのにも驚き

ました。道路の補修と瓦礫の撤去だけは終わっていますが、復興がほとんど進んで

いない現実はその光景をみただけでよくわかりました。震災から1年4カ月を経ての

この状況に、その復興にいたる課題の大きさ、困難さを実感させられました。

 

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目の前の風景は、今までTVや新聞、インターネットで何度も目にしてきた光景ですが、

やはり実際に自分の目で見てみると、そのショックはけた違いでした。ことばを失い、

締め付けられるような胸の痛みを覚えました。

そんな津波と地震後の大火事で何もかもなくなってしまった大槌町の市街地の真ん中

にポツンと建っているビジネスホテルの「寿」という建物がカリタスジャパンの大槌ベー

ス。カトリック系の災害救援組織カリタスジャパンは大槌町以外にも東北三陸沿岸のい

くつかの地域で活動されていて、大槌ベースはその一つです。このベースは長崎管区

の教会が運営されている関係で、とりわけ長崎からたくさんのボランティアの方が来ら

れています。ベース長の古木真理一神父も長崎の教会の神父さんで、昨年夏から三

陸海岸地域に入って被害状況や支援の調査、準備を始め、12月に救援前線基地とし

てこの大槌ベースを開設されたそうです。古木神父は非常に行動力のある方で、昨年

からすでに長崎ー大槌をもう10回近く往復されているそうです。私たちが伺った折にも、

大槌ベースには長崎のほか東京や大阪、神戸、静岡などからボランティアやスタッフの

方が来られていました。

 

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大槌ベースでは、古木神父をはじめ常駐スタッフのみなさんが、準備を整えて私たちの

到着を待ってくれていました。

今日の活動は、山間の第7仮設の方々の慰問、カリタスジャパン主催の「お茶っこ」とい

う交流イベントのお手伝い。岩手では、愛着のあるものには「○○っこ」と最後に「こ」をつけ

て言うそうで、「お茶っこ」は茶話会ようなお茶しながらいろんな話をするアットホームな催

しということでした。

朝食後、すぐ遊び班と大阪名物たこ焼き班に分かれて仕込み準備をし、11時から現地で

交流活動を開始しました。ベースから仮設まではマイクロバスでほんの10分ほどでした

が、見渡す限りの家屋や商店、病院、小学校、お寺、お墓などはそのほとんどが全壊し

ていました。

 

仮設に伺った当初、「何をしに来たのか?」と訝しげな視線が気になりました。無理もない

と思います。事前に催しの告知があるとはいえ、誰だかわからない集団が来て、容易に受

け入れてもらおうという方が甘い考えです。私たちが仮設内で容易に活動・交流できたのは、

カリタスジャパンさんのそれまでの地道な長い関わり、信頼関係があってのことだということ

は間違いありません。改めて、頭が下がる思いがしました。

  

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仮設の中の岩間商店さんの店頭を間借りして、たこ焼きのブースを作りました。たこ焼きの

準備中、遠巻きに様子を見ていた住民の方々が、やがて三々五々集まってきて、たこ焼き

が焼きあがるころには長蛇の列が出来上がっていました。

最初はなかなか油が鉄板に馴染まず苦戦しましたが、途中からうまく焼けるようになると、

みなさん「おいしい! おいしい!」と言って食べて下さり、しだいに笑顔がこぼれて、いろん

なお話ができる和やかな空気が広がりました。「おいしい!」と口コミで、食べに来てくれた

方がまた近所の人を連れてやってきてくれたりして、たこ焼き店は大盛況でした。おいしくで

きたたこ焼きのおかげで、住民の方々ともしだい打ち解け、気軽に声をかけてきて下さったり、

中には案内されて仮設の中を見せてもらった生徒もいました。信頼関係なしに、狭い劣悪な

生活環境を他人に見せたりすることはふつうでは考えられないことだそうです。スタッフの方

でさえそういう信頼関係を築くのに一定の時間がかかるそうですが、そんな中金剛の生徒た

ちが住民の方に声をかけてもらえたというのは、彼らの直向きさ、明るさ、元気良さが住民の

方々にストレートに伝わったからではないかと思います。べース長の古木神父もそのことをい

たく感心しておられました。

  

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隣のブースではヒューマンネットワーク部の3年生が中心になって、子どもの遊び、ゲームコ

ーナーを開設しました。さすがにヒューマンネットワーク部のメンバーは日ごろのボランティア

活動で鍛えられているだけあって、子どもや住民の方に関わっていくエネルギーが違いまし

た。事前に準備していったゲームだけでなく、前の広場を大きく使って、花いちもんめやかご

めかごめなどいろんな昔遊びを仕掛けていきましたが、子どもたちは大喜びで、大歓声をあ

げてはしゃいでいました。「子どもたちは大人以上にストレスをため込み、親や大人に気を使

って我慢している。こんなに子どもたちが歓声を上げて、元気にはしゃぎまわっている姿は

本当に久しぶりだ。思いっきり遊ぶことすらできない、遠慮がちな子どもたちを、こんなに笑

顔と歓声で元気いっぱいにできる君たち高校生は本当にすごい、素晴らしい。」と古木神父

には大変な褒めの言葉をいただきました。

ただ、活動が終わって帰り仕度をしている高校生や帰りのバスに乗り込む高校生たちを見る

子どもたちは寂しそうでした。「バイバイ、また来てね。」と子どもたちは声をかけてくれました

が、高校生たちはそれに返す言葉を見つけられずにいました。また、私たちの乗り込んだバ

スに思いっきり手を振りバスの後を追っかけてくる姿にはさすがに胸が痛みました。遠ざかる

子どもたちを見ながら、「また、会いたい。」けれど「また会おう。」とは気軽に言えない現実、

大阪と岩手の遠さ、出会いの重さを生徒は実感しました。「この光景は一生忘れられへん。

ここでの子どもたちとの出会いも絶対忘れへん。」バスの中である生徒はそんな風にその時

の気持ち呟いていました。 

 

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 大盛況のたこ焼き班でちょっとしたエピソードがありました。

たこ焼きが大盛況だったのはよかったのですが、たこがすぐそこを突いて売り切れてしまいま

した。大阪の家庭でよくやるウィンナーやちくわなどを入れた変わり種のたこ焼きも作っていた

のですが、岩手の方にとってはたこ焼きといえばたこしかないのでしょう。「ウィンナーやちくわ

はいらねぇ、たこの入ったたこ焼きが食いてぇ。」という声が多かったので、山本先生と放送部

のメンバーに被災した小学校グランドに作られている仮設商店街にたこを買いに行ってもらい

ました。

ところが、遠い山道をかなり歩いてやっとたどりついた仮設商店街の魚屋にはたこが売ってい

ません。手ぶらで戻るわけにはいかないけど...、どうしよう?と途方に暮れた一行でしたが、

そこで思いついたのがヒッチハイク。たまたま仮設商店街に買い物に来られていたある女性に

山本先生が声をかけ事情をお話をしたところ、快く車に乗せて市街地の魚屋まで行って下さい

ました。しかも、買い物が終わるのを待ってまた活動場所の仮設近くまでわざわざ送って下さ

ったそうです。ご自身も被災されているのにこんなに優しくしてもらったことに放送部のメンバ

ーも山本先生も大感激でしたが、その方は逆にはるばる大阪から岩手にボランティアに来て

くれたということをすごく感謝してくださって、これぐらいのことなら...とよくしてくださったそうで

す。何もない中でお互いがお互いのできる精一杯ことをし合う素敵な出会いでした。

本当はたこ焼きを食べに行きたいけれど、川向こうで商売をしていてずっと店を開けたままに

しておけないので仮設には行けませんいうその方のために、山本先生はまた遠くの橋を渡っ

て川向こうのその方のお店のある村までたこ焼きを配達し、思いがけない再会をたいそう喜

んで下さったそうです。そんな心温まる素敵な出会いが短い時間の間にありました。

 

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 その日のボランティアとスタッフ全員夕食作りは、ボランティアで分担ですが、今日から2日間は

大人数の金剛高校がその当番。みな手際よく自発的に協力して動いてくれました。この日の調

理当番は、おいしいカレーとサラダを作ってくれました。

調理班が食事の準備をしてくれている間に、他のメンバーは大槌ベースから歩いて10分ほどの

ところにあるNPOカタリバという団体が運営する被災した中学3年生の学習スペースを訪問して、

そこの活動やそこで学ぶ中学生たちの思いについてお話を伺いました。

神社の境内の社務所を利用しての学習スペースでしたが、被災した当時はやや高台の神社の

前まで津波が押し寄せた上、ガソリンスタンドやタンクの爆発などで大火災が起こり、神社の鳥

居の片側は黒く焼け焦げていました。かつてその神社付近が市街地の真ん中にあったあった昔

の街並みの写真や被災した当時の写真を見せていただきながら、甚大な被害について伺いま

した。被害のあまりの大きさには言葉が出てきませんでした。ただ、カタリバで受験勉強をともに

頑張った当時の中3生の言葉には心を打たれました。「津波にあったから人生が変わったと後で

笑って言えるようになりたい。」、「人のためになる仕事をしたい。」、「福祉の仕事をしたい。」、

「大槌の復興のために、ここに戻ってきて頑張りたい。」、などなど、未曾有の災害を経験し大変

な苦労をした中で、彼らが発した思いの詰まった言葉、しっかりと顔を上げて未来を見ようとする

志の高いた言葉の数々に、胸が熱くなりました。

 

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大槌ベースに戻って夕食後は、今日の活動の振り返りで、一人ひとりが簡潔に自己紹介と何を

して、何に気づいたかを語り合いました。やりっぱなしにしない、こういう振り返りの場を毎日持た

れているのは素晴らしいと思いした。

今夕長崎に帰られるみなさんの言葉に、次へのバトンを託された気がしたのは、ぼくだけではな

いと思います。そして、学習会。被災当時の生々しい動画を見せていただき、大槌町の被害状況

と現状の課題について古木神父のお話をうかがいました。お話を伺って初めて今日伺った仮設が

置かれている状況も見えてきました。

朝から夜の学習会まで盛りだくさんの一日でした。学習会後、東京から来られているボランティア

グループの方と夜遅くまでボランティアのことなどなどお話を詳しくうかがえたのも収穫でした。

疲れましたが、内容の深い学習会でした。

また、明日もみんなで頑張ろうと思います。