41期生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。保護者のみなさま、お子さまのご卒業、心よりお喜び申し上げます。
巣立ってゆくみなさんに、最後のメッセージをおくります。
来月8日、あと2週間足らずで第5回ワールド・ベースボール・クラシックが開幕します。
今回は、アメリカ人の父と日本人の母を持つ大リーガー、ラース・ヌートバー選手が日本代表入りしたことが話題になりました。
「侍ジャパン」を率いる栗山英樹監督は昨年末、代表発表を前に「WBCを通してファンに何を伝えたいか」と報道陣に聞かれ、こう答えたそうです。
まず、大リーグでプレーする日系人選手を代表に選ぶ可能性を明かし、「グローバル化する世の中で、そういう人たちが(仲間として)『普通にいる』ということを、子どもたちに伝える責任がある」。
そして、隣国同士のロシアとウクライナが戦い、傷つけ合っている状況を踏まえ「例えば、外国の人が当たり前のように友達にいれば、(状況は)違ったものになっていたかもしれない」。さらに「僕にとっては、日本の選手も、その選手も、かわいさは一緒。そういうことが当たり前にならないとおかしい」と語りました。
生まれた国が違っても、育った環境が違っても、同じチームの同じ仲間。代表チームの監督として、成績以外にもしっかりとした目標と責任を持ち、行動していることに、強い感銘を受けました。
「アロハ・レター」という絵本があります。世界の子どもたちが「トモダチ」の輪を広げていくことで、世界が変わっていく、平和になっていくというお話です。
この本について、作者はこうコメントしています。
「国際協力や海外支援も大切だけど、もっとシンプルに『ダチが困ってるんだから、助けるのはあたりまえでしょ』って」
現実はお話のように簡単ではないと思うでしょう。大きく考える必要はありません。ここで大事なのは「顔が見える関係」を忘れないこと、想像力を忘れないことだと考えます。
例えば、トルコ地震で多くの人が亡くなったとニュースで見ても、涙があふれるほど心が動かされることは、なかなかありません。が、被災した子どものあどけない笑顔や、泣き崩れている親の顔を見たらどうでしょう。
お隣の人の顔を見てみてください。朝の挨拶でも、「おはよう」と言われて目が合うと、無視することは難しいのではないですか。
「顔が見える」ということは、すなわち顔が語る言葉を受け取っているということなのです。
スマホやネットで簡単につながる現代は、便利な一方で、自分の周りに「顔」が分からない人が大勢いたりします。その人たちのデータは十分すぎるほどあるのに、「顔」が分からない。
そんな「のっぺらぼう」な人たちは、私たちにとって、ただの風景や数字になってしまいがちです。その結果、使い勝手の良いコマに見えたり、点数やお金に見えたりします。つながっているようで、実は分断されているのです。
逆にいえば、私たちが心動かされ、相手を思って行動しているとき、それは相手の「顔」を見、表情を感じ、言葉を聞いているときです。相手の気持ちや立場、背景などを想像し、思いやっているときです。
「顔」が思い浮かべば、心を寄せることができます。手を取り合い、つながっていくことができます。大きな課題を乗り越えるための力を得ることができます。
どうか自分の周りに、多様で複雑な「顔」を持つ人たちがいることを忘れないでください。そして「顔」の見える関係の輪を大きく広げていってください。お互いの違いを見つけ、理解しあい、何かを共に創りあげることができるようになってください。
これが、私からみなさんへの最後のメッセージです。
以上、校長の式辞といたします。
令和5年2月24日
大阪府立香里丘高等学校 校長 宮内 順