第44回入学式 式辞

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。

保護者のみなさま、お子さまのご入学、心よりお祝い申し上げます。

 

さて、みなさんは「レジリエンス」という言葉をご存知ですか?

近年さまざまな分野で注目が高まっている言葉なので、「知っている」「聞いたことがある」という人もいるでしょう。

もしかしたら、野口聡一・宇宙飛行士が乗り組んで2020年に打ち上げられた宇宙船「レジリエンス」を思い出した人もいるかもしれません。

 

「レジリエンス」は、「復元力」「弾力」などと日本語に訳されます。

主に、逆境から立ち直る「心の回復力」を指す言葉として使われています。

「折れない心」「打たれ強さ」と言い換えてもいいかもしれません。

 

長い人生の中では、大なり小なり、誰もが必ず失敗を経験します。

みなさんぐらいの年齢なら、学業が振るわなかったり、部活動や友人関係が上手くいかなかったり。

将来、仕事や財産を失い、もう二度と立ち直れないと感じるほどの挫折感を経験することもあるかもしれません。

レジリエンスは、そうした困難な状況から私たちの心、私たち自身を守ってくれる能力です。

だから、この力のことを「決してなくならない、生涯最高の財産」という人もいるのです。

 

では、この貴重なスキルはどうやったら手に入るのでしょうか。

まず、この力は「失敗」と「立ち直り」の積み重ねによってのみ育てることができる、と研究者たちは考えています。

時間も根気も必要で、簡単ではありません。

一方で、知能がずば抜けて高かったり、並外れた才能に恵まれていたりする必要は全くないとも言われています。

誰でも手に入れることができるものなのです。

 

ただレジリエンスも万能ではありません。

困難には様々な種類と大きさがあり、問題に出くわした時の私たち自身の状態も異なるため、受けた傷の度合いが変わってくるからです。

どんな状況下でも力を最大限に発揮するため、必要なものは2つあります。

一つは、「失敗」「立ち直り」の繰り返しから得た「自分は必ず立ち上がる」という、自分を信じる力。

そして、もう一つは「助けを求める」力です。

 

新しいことを始めなければ、間違いも失敗も経験せずに済むかもしれません。

でも「失敗しない」ことを第一に過ごしているだけでは、進歩も発見もないままです。

本校には、みなさんのレジリエンス育成を強力に後押しする環境があります。

挑戦するみなさんを信頼し、見守り、、励まし、そして支えていきます。

失敗や挫折は、たとえそう感じられたのだとしても、全てに及ぶわけではなく、永遠に続くものでもありません。

起こったことを悲観しすぎず、様々な角度から見直し、リカバリー方法を考える。

苦しいことこそ面白がり、「学ぶ機会を手に入れた」と前向きにとらえる。

それらの繰り返しが、みなさんの一生の財産になっていきます。

 

宇宙船「レジリエンス」。

名付け親は、搭乗が決まっていた野口さんら3人の宇宙飛行士でした。

世界中がコロナに苦しんでいた2020年。

「前向きなものを世界に届けたかった」「どう立ち直るか、一緒に考えていこうという思いを込めた」といいます。

 

心をいっそうしなやかに、伸びやかに、そして強靭に。

ここ香里丘での「挑戦」「失敗」「立ち直り」の経験が、みなさんが将来を切り拓いていく時、心強い相棒になってくれるはずです。

今日からの学校生活が、みなさん一人ひとりの大きな成長につながりますよう、心から願って校長の式辞といたします。

 

令和5年4月10日   

大阪府立香里丘高等学校

校長 宮内 順