歴史小説が熱い
一時ほど『歴女』ブームだとかは言わなくなりましたが、確かに女性の歴史への興味は強くなっていつようです。コミック誌でも、ライトノベルを含む小説でも、歴史、中でも戦国時代を舞台にしたものはあふれています。真田幸村や伊達政宗・上杉謙信に直江兼続など、キャラクター化されとても売れています。
同性同士はもちろん、恋人がデートコースに歴史の舞台を旅することも。もはや一般常識になっているのかも。
小説でも富樫倫太郎の≪軍配者シリーズ≫、北沢秋の≪合戦屋シリーズ≫、和田竜の作品などは、高校生から大学生に多くの支持を得ています。これら新しい歴史小説の書き手たちは、資料偏重になりがちだった従来の歴史小説とは違い、理屈や史実にとらわれすぎず自由に人物を描き、生き生きとしたタッチで、歴史に生きた人たちを描きます。将来の話題作りにもなるし、この秋、読んでみましょう。
本能寺の変 431年目の真実/明智憲三郎
分類210.4 文庫 バカ売れしています。織田信長は覇権を確立する直前で明智光秀に打たれた。ローマのカエサル暗殺に匹敵する、日本史上の謎多き大事件。その謎は多くの仮説を生んでいます。それらの説を、多くの資料を読み解きながら検証し矛盾を暴き、これこそ真相ではないかと仮説を探します。明智一族である憲三郎氏がたどり着いた結論に瞠目せよ。
歴史ミステリとして読むほうが適切だと思いますが、この説は納得させるに足る迫力がいっぱい。
三国志男/さくら剛
分類292.2 文庫 三国志では数々の信じられないような戦闘シーンが多く登場します。中国文化では、しばしば「白髪三千丈」に代表されるような誇張が行き過ぎてしまうことが見られます。異文化圏の私たちにとっては、想像力を飛び越えてしまう表現です。される
天主信長〈裏〉 天を望むなかれ/上田秀人
天主信長〈表〉 我こそ天下なり/上田秀人
分類913.6 文庫 本能寺に至るまでを、信長から王「表」と官兵衛から見る「裏」で書き分ける。本能寺の意外な真相に、秀吉・信長・光秀、それぞれの思いが交錯しつつ、官兵衛の智謀が炸裂する。
安土城の幽霊 / 「信長の棺」異聞録/加藤廣
分類913.6 文庫 本能寺の変の謎に迫ったベストセラー「信長の棺」に始まる三部作に連なる物語が三篇収めています。
翔る合戦屋/北沢秋
分類913.6 文庫 「軍配者」シリーズと並ぶ人気の「合戦屋」シリーズを締めくくる一冊。甲信地方の覇権をかけ武田家と戦う石堂一徹。「哄う合戦屋」後日談。引き際は潔し。
符堅と王猛 不世出の名君と臥竜の軍師/小前亮 「王道の樹」改題
分類913.6 文庫 三国志の時代から下ること100年後、中国は五胡十六国時代という国の興亡を繰り返す戦乱の時代にあった。そんな中で華北を統一する王にまでなったのが苻堅である。王猛という名補佐役を得、時代の先を行く先進的な姿勢で、融和政策を実行し、一時代をなした。王猛が亡くなった後も高い理想を挙げ、併呑した国家の皇族さえ殺さず、苻堅は諸民族を糾合するという理想を追求し、実現の際まで行き、そして滅んだ。その符堅と王猛の事績を小説化。
天魔ゆく空(上下2巻)//真保裕一
分類913.6 文庫 応仁の乱が戦国のふたを開けた。信長に先立って、旧い権威を壊し続けた細川政元を描ききる。
対決!!片桐且元家康 真説大坂の陣/鈴木輝一郎
分類913.6 文庫 中間管理職・片桐且元。秀吉配下で賤ヶ岳7将としてもてはやされた男が、武辺ではなく、内政を仕切る。弱体化する豊臣を守るため、なれない立場から家康と対決する羽目に。大坂方での立場もあいまいなまま、最善を尽くそうとする且元の奮闘を描く。意外に秀頼がかっこよく書かれている。
風の陣(全5巻)/高橋克彦
1<立志篇>2<大望篇>3<天命篇>4<風雲篇>5<烈心篇>分類913.6 文庫 高橋克彦の古代東北3部作。「火怨」「炎立つ」に先立つ時代を描く。本作も含めた古代東北3部作は、地方の側から、日本国家の成立過程を見ることになる。機内(朝廷)の横暴などに対して、被征服民がいかに抵抗し、誇りを守りつづけようとしたかが描かれている。必見の書。
軍配者シリーズ
早雲の軍配者(上下2巻)/富樫倫太郎
信玄の軍配者(上下2巻)/富樫倫太郎
謙信の軍配者(上下2巻)/富樫倫太郎
分類913.6 文庫 富樫倫太郎に「合戦屋」の北沢秋、「のぼうの城」の和田竜、この辺の作者は高校生でも読んでおいてもよい。何かと歴史ブームが拡散中なので、ちょっとした教養の一部にもなる。≪軍配者≫シリーズは、関東の興亡において中心的な役割を果たした武田、北条、上杉の3氏の軍師を、独自に創造して書き進めている。それらから、軍配者同士の友情や競争心が、時に爽やかに、時に残酷に語られていく。軍配者を通してみる早雲、氏康、信玄、謙信、そのほか登場する武将たちは、非常に魅力的である。
ジパング大乱 伊達・上杉決起す!/林信吾
分類913.6 文庫 関が原の合戦の端緒となった上杉征討、石田の挙兵を知るや家康は東海道を取って返し対決に臨む。まさにその時欧州で対峙する伊達・上杉が天下取りに立ち上がる。仮想日本史、ここに開闢。
戯史三国志(全3巻)
戯史三国志 我が糸は誰を操る/吉川永青
戯史三国志 我が槍は覇道の翼/吉川永青
戯史三国志 我が土は何を育む/吉川永青
分類913.6 文庫 作家の数だけ三国志がある。様々な作家の三国志の中でも、この三国志は語り部として意外な人物を用意する。一人は陳宮。曹操陣営の俊英だった彼は、早々から呂布に乗り換えた。孫堅の時代からの旧臣・程普。誇りあるあまり周瑜を受け入れがたく思っていた男。そして蜀漢において異例に長く登場する廖化。滅亡時の幕僚でもある。それぞれの人物が、それぞれの魏に生きた語りが心地よい。
駈込寺陰始末/隆慶一郎
分類913.6 文庫 天才・隆慶一郎。実働5年ほどの作家生活で、次々と魅力ある小説を発表した。コミックにもなった『影武者徳川家康』『花の慶次』(一夢庵風流記)などは知っている人も多かろう。こちらは幕藩体制確立後の時代は、その支配体制の確立のため儒教思想が徹底された時代でもある。女性から離縁を言える状況ではなかった。唯一の方法は鎌倉東慶寺に駆け込むこと。しかし、そのようなことを男が許すはずもなく、駈込むことは難しかった。公卿の身を捨て御所忍びの棟梁となった公麿は、東慶寺の住持の玉淵尼を守りつつ駈込む女たちを救う。スピーディーな展開が魅力。