We can only ask that they recognize that with their privileges come responsibilities.
新規課題①「タイタニック号沈没の真実」の第6段落の2文目です。この文構造がわかりません、具体的には2つ目のthat の働き、with / comeの解釈がわかりません、との質問を受けました。素晴らしい質問です。正にこの文こそ、この教材を休校中の課題に入れたい、と思って選んだ理由の一つです。ですので、また、すごく長くなりますが、この場で皆さんと共有しますね。興味を持ってもらえると嬉しいです。
背景は以下の通りです。
映画の「タイタニック」では、上流階級の男性たちが我先に、沈没するタイタニック号から逃げようとします。しかしながら、事実では上流階級においては、命を落とした女性・子供たちは少なくて、むしろ男性たちは自分を犠牲にして女性・子供たちを救っています。そして数字や、個人の例を用いて、その実際のエピソードを紹介したます。
その後、上流階級の男性たちが己を犠牲にして、女性や子供たちを救ったなどどいうエピソードは現在の人々は信じないだろう、と続き、民主的で変化にとんだ現在においては、皆が人は平等にであると考えるが、それでもやはり社会にはa governing elite, the rich and the powerful「社会を支配するエリート層」が存在するのだとなり、そしてこの1文が来るわけです。
文法的に言うと、askは suggest / demand / propose等と同様、ここでは「提案・命令・要求・主張を表す動詞」として用いられています。このような動詞の用法について、Ultimate p.364に「仮定法現在」の説明があります。「提案・命令されたからといって、実際に行うかどうかはその人次第」だからthey (should） recognize、recognizeは原形です。そして、2つ目のthatはただ単にrecognize that S+Vの名詞節を作るthatです。ちなみに、recognize thatは「いやいやながらも認める」という感じらしい。
「我々は社会を支配するエリート層にthat以下を認めるよう、求めることしかできない」
これが骨格。では、that以下は？withで始まっているから倒置であることは明らかですね。
Responsibilities come with their privileges.です。なんで倒置したんだろう？「旧情報から新情報」のルールだとresponsibilityは5段落・20行目に出ているけれど、privilegesという「単語」はここが初めてなので、ここではしっくりこない。前文のThe rich and the powefulが they / their の具体的内容だから、その近くにprivilegesを置きたかったのかも。読者に「あれ？」と思わせただけでも、この「倒置」は役目を果たしています。
「責任がやってくる」が骨格。withのイメージは「ともにある・一緒」ですから、「責任と特権はともにやってくる」→「特権には責任が伴う」
特別な用法を用いた文章ではありませんが、深い文です。かつてのエリート層・上流階級の人たちは、自分たちの特権には"an unwritten code of honor"『暗黙の了解としてのあるべき名誉のルール』があることを理解していた。それに対して、今のthe rich and the powerfulには期待しても無駄だろうけれど、せめて、「特権には責任が伴うことぐらい、分かって欲しい」という流れです。
"noblesse oblige ノブレスオブリージュ"、聞いたことはありませんか？元々はフランス語。天高ではよく使う言葉です。財産や権力など、社会的地位のある人には、他人のために行動することが求められている、ということです。法的責任があるわけではないけれど、社会のために行動することを期待され、期待に応える、かつての those in position of powerはそうであった。でも、今日我々は、「エリート層」に期待もしないから失望することもない、それが最後の文章です。このironyを感じられたら、この文章が「読めた」ということですね。未来ある若者である天高生には、この文章を読んで、唸ってもらえたら、と思います。どうでしょう？
訂正を１つ。ごめんなさい。新規課題②「速読トレーニング」の正解は(C)④ (D)⑤です。確認してください。連絡してくれた人、ありがとうございます。
さて、今日の写真は午後6時過ぎの風景です。日が長くなりました。明日から5月です！
