第1号 2020年5月
135期の皆さん、入学おめでとうございます!!
2020年度第一号ということで、図書館と図書館サポーターについて、紹介します。
■ 北野の図書館ってどんな感じ?
■ 図書館サポーターって何?
――――――5人を見殺しにするか、5人を助けて1人を殺すか。
これは、かの有名なトロッコ問題の重要部、「ある人を助けるために、他の人を犠牲にするのか」という部分です。
さて、本とは少し離れますが、皆さんならどうしますか? ここでは、右の画像のような「線路を切り替える」タイプの問題について、話します。友人にこの問いを投げかけたところ、「切り替えない」との答え。私も「切り替えない」派、なのですが、その理由は友人とは少し違いました。私は自分が「殺人犯」となるのが怖いから、友人は切り替えたら「意図的に殺す」ことになるけれど、そのままなら「不幸な事故」となって、人が「殺された」ことにはならないから、という理由でした。二人でさえ意見の違いがあるので、この本に出てくるハーバードの学生達からは、もっと色々な意見が出てきます。 サンデル氏は、まず初めにこのトロッコ問題を取り上げ、派生問題も含めハーバードの学生と様々な議論を行います。
サンデル氏が、ハーバードの学生とこのような哲学的な問題や具体的な事件、訴訟について対話しながら、「Justice(ジャスティス、正義)」について講義をしていきます。その過程で、様々な考え方を取り上げます。例えば、功利主義、リバタリアニズム、ジョン・ロックの思想、カント哲学……。名前だけを並べると難しそうですが、サンデル氏が挙げる様々な例、ハーバードの学生の議論の展開、それに対する反論などによって、理解しやすくなっています。
また、サンデル氏は、この講義の目的を「理性の不安を目覚めさせ、それがどこに導いていくのか見ることだ」と述べています。これはどういうことなのでしょうか。政治哲学は、私たちが慣れ親しんだ前提を崩し、不安定なものにさせます。サンデル氏は、この不安を経験することを通じて、批判的な考え方や政治的な改善、道徳生活さえも活気づける、と話しています。
この機会に、少しでも哲学に近付くのも、ありだとは思いませんか?
若い夫婦と5歳の息子、ヒロ君の住む地域が、ある日大災害に襲われます。その時一方の世界ではお父さんが亡くなり、お母さんが生き残りました。もう一方の世界ではお母さんが亡くなり、お父さんが生き残りました。そしてヒロ君は、どうやらこの2つの世界を同時に生きているようでした。引き裂かれた家族を、唯一繋ぐヒロ君。そんな彼の前に、恐ろしい「怪物」が立ちはだかるのです。
パラレルワールドを題材にした作品は数多く存在します。たいていは、2つの世界を行き来する力を持った「ヒーロー」が悪と闘い、世界を救うまでが「ヒーロー」の視点で語られるでしょう。この作品が独特なのは、その「ヒーロー」が5歳の男の子であるというところ。そしてその「ヒーロー」の視点ではなく、彼の両親の視点で物語が進んでいくというところです。平行する2つの世界の中で闘い、成長して行くヒロ君の姿を、見守ってみませんか。
舞台は特殊技術により開発された、新型の航空機ジェリーフィッシュ。愛嬌のある見た目をしたその乗り物の中で、乗組員の一人が変死を遂げ、さらには雪山に不時着してしまいます。脱出、侵入ともに不可能と思われた状況下で、一人、また一人と不審な死を遂げていく乗組員たち。次々に減っていく容疑者、犯人は一体誰なのか。物語は、刑事、被害者、そして犯人という3つの視点から展開されています。特に犯人の独白は、事件の全貌が明かされるにつれてより大胆になり、散りばめられた手がかりが読者のもとへと集まってきます。少しずつ霧が晴れて行くような感覚とともに、ページをめくる手が、早く次の行を読もうとする目が、止められないくらいに魅力的な物語。現代版の「そして誰もいなくなった」であると銘打たれた本格派ミステリーを、是非お楽しみください。
ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑤子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒涛のアートサスペンス!
アートには、どれほどの力があるのか。戦争を阻止する力はあるのだろうか。この作品が問いかける究極の問いです。実際にイラク戦争開戦時に国連本部で起こった事件をもとにこの本は描かれます。戦争そのものの悲惨さを描く「ゲルニカ」にかけられた暗幕、このことが意味するものとは一体何なのか。半世紀前に画匠ピカソによって残された作品が物語る戦争の愚かさとは…。
主人公は自由気ままな両親に育てられた少女、更紗。父親が亡くなり母親にも捨てられた9歳の更紗は叔母に引き取られるが、そこでの肩身の狭い生活と従兄からの性的暴行に嫌気がさし、公園で声をかけてくれた小児性愛者の大学生、文の家に居候をはじめる。異質な形で始まった2人の自由な生活は長くは続かず「家内更紗ちゃん誘拐事件」として報道され、加害者と被害者というレッテルを貼られた2人は引き離されてしまう。15年後、どこにいっても事件の被害者として居心地の悪い生活を強いられる更紗は、偶然立ち寄ったカフェでマスターをする文と再会し、2人は自分らしくいられる居場所を求めて動きはじめる…。
善意とは何なのか、自分が見ているものは真実なのか、人間関係とは何なのか…。不思議で言葉では表しきれない更紗と文の人生を垣間見た後には、思わずその世界観に飲み込まれ、様々なことを考えさせられるはず。
2020年本屋大賞受賞作。