<4月8日(月)第70回入学式>

4月8日(月)、午後1時30分より、第70回入学式を挙行いたしました。以下に、式辞(概要)をご紹介します。

○桜舞い、草木の新芽が色鮮やかに照り映える今日の佳き日に、新入生及び保護者の皆さま、ご来賓の皆さま方をお迎えし、第70回入学式を挙行できますことは、教職員一同大きな慶びです。保護者の皆さま方におかれましては、今日までご苦労を重ね、慈しんでこられましたお子様のご入学を、心よりお祝い申しあげます。

○東淀川高校は、昭和30(1955)年に設立され、今年度70周年の年を迎えます。平成29(2017)年度に文系・理系と「看護医療」・「幼児教育」の二つのコースを設置する普通科専門コース設置校になり、この春、第五期生が卒業しました。同年度、日本語指導が必要な生徒選抜と一般選抜を実施する学校になりました。

〇今年度、日本語指導が必要な生徒選抜により、多様な国につながり(ルーツ)を持つ16人の生徒が入学をしています。本校は、日本語指導が必要な生徒選抜で入学した生徒と一般選抜で入学した生徒が、ともに学ぶ学校です。本校では、互いに違いを認め合い、誰もが安全で安心な学校生活を送れるよう、生徒一人ひとりに寄り添った教育を進めてまいります。

○ただ今入学を許可しました320人の皆さん、入学おめでとう。皆さんの世代は、過去三年間のうち、とりわけ始めの二年間、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けました。日本の中学校に三年間在籍をしていた人は、中学校一年生、二年生の期間、授業、学校行事、部活動等に制限がある等、苦労をしてきたことと思います。困難な環境のもとで、努力を積み重ねてきた皆さんに、心から敬意を表します。

○いよいよ本日から、東淀川高校第70期生としての高校生活が始まります。高校生になるということは、ある意味では、大人の階段を一段あがるということです。そのような門出の日だからこそ、皆さんにしっかりと理解をしてほしいことがあります。皆さんは合格発表以来、多くの方から「おめでとう」と声を掛けられ、嬉しかったことと思います。ただ、この喜びは皆さんの努力の賜(たまもの)であると同時に、保護者の方、ご家族の方、小中学校の先生方、支援してくださった方など、多くの方々の深い愛情と支えがあったことを、決して忘れないでください。また、今年も、残念ながら本校への入学が叶わなかった受験生がいました。それだけに皆さんには、「この学校に入学できなかった人の分まで、高校生活を大切にする」という思いを持って、毎日を過ごしてください。

○入学にあたって、言語学者である川添 愛さんの著書「世にもあいまいなことばの秘密」から、一部分をご紹介します。

○(著書からのご紹介です)言葉というものはつくづく難しいものだと思います。言語学の立場から眺めれば、私たちが発する言葉のほとんどは曖昧(あいまい)で複数の解釈を持ちます。しかし、私たちは、自分の頭に最初に浮かんだものを「たった一つの正しい解釈」と思い込む傾向があります。SNS上のやりとりを眺めていて、「言葉のすれ違いさえなければ、この人たちはもっと分かり合えたかもしれないのに」と、残念に思ったことは、一度や二度ではありません。

○川添さんは、解釈が複数に分かれる例として、「低温やけど注意」という言葉を挙げておられます。さらに、多様な解釈が成り立つ例として、「頭が、赤い、魚を、食べる、猫」という言葉を挙げておられます。

○この話を踏まえて、私から、新入生の皆さんに考えてもらいたいことを、二つ紹介します。一つめは、高校生活において教科の学習だけでなく、本を読んだり、さまざまな体験の機会をとおして、皆さんの世界を広げてほしいということです。

○二つめは、高校での学習、学校行事、部活動や学校外の活動等において出会う多様なひとと積極的に対話をしてほしい、ということです。これからの高校生活を想像してください。異なる中学校等、異なる家庭環境、さまざまな文化的背景のもとで育ってきた皆さんが、東淀川高校に入学してきています。高校生活において皆さんが出会う多様なひととは、同級生、先輩、将来できる後輩、教職員、部活動等で出会う他校の生徒であったり、ボランティア活動に参加した際に出会う大人のひとかもしれません。また、皆さんが高校を卒業した後、生きていくこの世界は、自分と異なる考え方を持つ他者との出会い、異なる文化との出会いに迫られる世界でもあります。

○高校生活をとおして、多様なひとに出会い、積極的に対話をしてください。また、対話をする際、言葉には多様な解釈があるということを忘れないでください。自分が発する言葉、SNSに書き込む言葉を、自分とは異なる解釈をするひとがいるかもしれません。行き違いが生まれるかもしれません。そのようなときに、互いの違いを認め、許容し、豊かな人間関係を築き、互いに成長してほしいと思います。

○何か困ったことがあれば、いつでも先生方に相談をしてください。東淀川高校には、生徒一人ひとりの、ありのままの姿を受け入れ、成長に導く先生方が沢山います。

○最後になりましたが、私たちが大切に考えるのは、お子様のかけがえのない未来です。保護者の方々と学校、そして地域社会が連携し、お互いの信頼関係のもとで教育に取り組むことが、子どもたちの健やかな成長を促す唯一の方法だと考えています。ご心配なことがございましたら、いつでも遠慮なくご相談ください。私たち教職員一同、皆さま方のご期待に添うよう力を合わせ、320人全ての生徒が安心して学校生活が送れるよう、一人ひとりに寄り添いながら、「入ってよかった。行かせてよかった」といわれる学校づくりに邁進してまいります。何卒、ご理解とご支援をお願い申しあげ、式辞といたします。

令和六年四月八日 大阪府立東淀川高等学校長  森瀬 康之