「校長はん、前から気になってまんねんけどな、(第〇話)と(番外)ってありますやろ、何でんねん?それ」
「ああ、(第〇話)ってのは、視覚障がいや視覚支援学校のことについてあらかじめ作っていた話やねん。(番外)ってのは、学校や校長が出張なんかであったことを書いてるねん」
「番外はたいてい何かオチみたいなんがついてまんな」
「まあ、落語調で書いとるさかいにオチがないとな。けど結構大変やねんで、あんまり期待せんといて」
「素人やさかいな、ワシは期待しとらんで」
「そう言われると寂しいな。ところで、北やんは自分の目が見えへんことについてどない思ってまんねん」
「ワシはもともと見えてへんから、見えてへんのが普通や、見えてる世界がわからへん」
「そうでっか」
「そら、ワシと違う思いの人もおるやろけどな」
「自分の障がいを受け入れることを障がいの受容って言いまんねんけどな、人によってはこれが難しいんですわ」
「校長はんは障がいの受容はできてまんのか?」
「さあ、今の見え方の状態はできてるけど、これからさらに見えんようになるってところはできてへんかもしれんなぁ。それほど難しいねん」
「大変やなぁ」
「一般的に、障がいの受容っていくつかの段階があるねん。ワテみたいな網膜色素変性症の場合、割と見えている時期は、自分の目が悪いことを隠そうとするねん。あんまり他の人に知られんようにって」
「隠せるほどやったら、まだそれほど目が悪くないっちゅうことやな。校長はんもそうやったんか」
「ワテは高校くらいから暗いところが見えにくかったから、「〇〇目」ちゅうてよう言われてたで」
「〇〇目って何や?」
「英語で言うとbirdやけどな、今はなんやかんや厳しいさかいに、差別用語に当たるかもしれへん言葉やから〇〇って表してまんねん」
「昭和の時代は今から考えられへんくらいに差別用語が飛び交っとったもんな。ワシなんかも〇くらなんて普通に言われとったもんな。さすがに傷ついたで」
「そういうのがあるから、見えへんことを隠そうとするねんな。ワテは多少のこと言われても聞き流しとったから、そんなに気にならんかったけど、気になる人は気になるんやろなぁ」
「最近は特に気にする人多いなぁ。時代の流れやな」
次回へ続く
