Z世代 世界を変える 行動する私たち

この記事のタイトルは、令和3年度のGLHS10校による国内研修旅行のテーマです。この企画は、コロナ禍のために実施できなかった天高SSH重点枠とGLHS10校コンソーシアムの海外研修旅行に代わるものとして実施しています。

本日は、その第一日。

朝、新大阪から新幹線で東京へ、東京駅から総武線で千葉県へ移動。半日がかりで、量子科学技術研究開発機構(QST)に到着しました。

量子科学技術を応用した重粒子線によるがん治療を行っているQST病院が今日の主な訪問先です。

病院の職員食堂で昼食をいただいたあと、会議室で、量子生命科学研究所の所長の方からのごあいさつに続いて、4つの講義を受けました。

QST千葉地区の概要説明、量子科学研究トピックス(AIで脳を読み解く、計算機を用いて生体分子の立体構造を見る)、量子技術を用いて脳内を「観る」、量子技術を用いてがんを「治す」。世界最先端の技術と実際の応用について、超難解な内容を私たちに分かるように、熱く、やさしくお話してくださいました。

研究者の皆様が研究にかける熱い思いと人類への貢献に向けた飽くなき挑戦を続けておられるエネルギーが私たちの心も熱くするような濃密な2時間でした。

休憩をはさんで、施設見学と体験です。3グループに分かれて案内していただきました。

QSTの前身は放射線医学総合研究所。そのことがよく分かる「緊急被ばく医療施設」の見学に続いて、脳内を「観る」装置、「分子イメージング棟ヘルメットPET」の見学を行いました。それぞれの担当の先生方から、より詳しい説明をいただきます。

(左から、治療室・衣服の放射性物質検査、PETの説明・新型ヘルメットPET装置)

体験では、私は、重粒子線によるがん治療を実際に行っている「HIMAC棟」に同行しました。炭素原子をイオン化し、光速の70%まで加速して、がん細胞をピンポイントでたたくという世界最先端の設備です。

地下2階にサッカーコートの広さの設備があり、全貌は模型でしか見ることはできませんが、実際に炭素をイオン化している装置や加速器の一部を見せていただきました。今日は、患者様の治療が実際に行われているとのことで、緊張感あふれる見学となりました。

左の写真がそのイオン発生装置です。今まさにここで発生させた炭素イオンが、隣の部屋の線形加速器で光速の11%に加速されてから、巨大なシンクロトロンで光速の70%に加速され、患者に届けられているということでした。SF映画の1シーンのような光景です。

そのあと、イオン発生装置をモデル化したプラズマ発生装置を使って、実験を体験させていただきました。原理から詳しく説明していただいたのは、この設備の開発に当初から関わっておられた物理がご専門の先生です。

見学者の生徒たちにも質問を投げかけていただき、生徒も頑張って答えていました。臨場感のある物理の授業といった趣の楽しい時間でした。

炭素ガスを注入したときのプラズマは白色でしたが、最後にネオンガスを注入した実験では、きれいな赤いプラズマが見えました。プラズマの色が物質によって変化するのはなぜか。難しいですね。

見学、体験後は、会議室に戻って最後の講義「QSTが見つめる未来像」と閉会のご挨拶をいただきました。

半日間の至れり尽くせりの見学プログラムをご用意くださったQSTの皆様に改めて感謝したいと思います。本当にありがとうございました。充実した時間を過ごすことができました。

東京に戻って宿舎到着です。皆さん、お疲れ様でした。

令和4年1月5日 学校長