本日第69回卒業証書授与式が今日され、346名の卒業生に授与されました。3年生は、標準服が導入されていない最後の学年で、式典には、袴姿あり、スーツ姿あり、での参列でした。
この中河地地区で10代を過ごしていない私にとっては、初めて体験する卒業式です。それぞれが、それぞれの思いを込めて、卒業式に臨んだことと思います。それでは、私が卒業式で述べた式辞を掲載いたします。
=式辞=
ひときわ厳しかったこの冬の寒さの中に、確実に春の兆しを感じる今日、大阪府立布施高等学校第69回卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、大阪府教育委員会ご代表 奥野 憲一様をはじめ、元府議会議員 谷川 孝様、地域の小・中学校の校長先生方、また、同窓会、PTAのみなさまなど、多数のご来賓の御臨席を賜りました。高いところからではございますが、厚く御礼申し上げます。
ただいま、346名の皆さんに、卒業証書を授与いたしました。
保護者の皆様方には、お子様が本校での課程を無事修了され、本日の晴れの卒業の日を迎えられましたこと、さぞ、お喜びのことと存じます。教職員を代表し、心からお祝い申し上げますとともに、本校にお寄せいただいたご理解とご協力に対しまして、深く感謝を申し上げる次第でございます。
さて、七〇期生のみなさん、卒業、おめでとうございます。
みなさんにとっては、ついこの間、布施高校の門をくぐったという思いがあるのではないでしょうか。皆さんは、教科の学習はもとより、ホームルーム活動や部活動、学校行事等を通して、友人や先生と交流を図り、多くのことを学んだことでしょう。皆さんは今日を境に、それぞれの道に進んでいくわけですが、高校生活で学んだことを糧として、確かな足取りでこれからの人生を、歩んでほしいと思います。
それでは、卒業にあたり皆さんの前途を祝し、私の思いを述べさせていただいて、餞(はなむけ)の言葉にしたいと思います。
みなさんが、この世に生を受けたのは、1998年、99年です。この年、後々世界を変えることになる会社がアメリカで設立されます。それは、1998年8月に設立されたGoogle社です。現在、Google社は世界50か国に60000人を超える従業員を抱え、世界中に数十億人というユーザーを抱えています。今の世界は、Google抜きには成り立たないような世の中です。日本でも「ググる」という言葉で、何をするのか通用します。
そして、アップル社から2008年にiPhone3Gが発売され、瞬く間にスマホが拡大していきました。まさに、あなたたちは、インターネットやスマートフォンと共に育ってきた世代、「SUPRE STUDENTS」です。何かを調べたければ、ほんの少し指を動かし、液晶画面の向こうに「正解」を見つけることが出来ます。「月までの距離は?」とスマホに向かってしゃべれば、すぐに答えを教えてくれるでしょう。これから、AIが発達すれば、BIG DATEを活用して、体の症状を入力し、話すだけで診断をしてくれるかもしれません。2020年には、車の自動運転は実用化されているでしょう。もう、そんな世の中は目の前に来ています。
さて、ここからが問題です。こんな未来を生きていくために、あなたたちはどうしたらいいのでしょう?世界中で色々な人たちが未来予測をしています。「AIが発達すれば、今ある職業の半分は、AIに取って代わられるであろう」とか・・・。技術の進歩が果たして豊かな社会をもたらしてくれるのだろうかとか・・・。疑問はたくさん生まれます。ところが、この疑問には、誰も答えてくれないのです。なぜなら、あなたたちの親の世代の成功モデルは通用しないからです。私も含め、今の大人世代は、「ひたすら、知識を蓄え、正しく処理すること、なるべく短時間にミスなく正解を導くこと」を学習し、そのことがうまくできた者が社会で成功する世の中を生きてきました。しかし、そんな正解を導き出すことなんて、これからはAIがやってくれるのです。あなたたちが、これからの世の中を生きていくために必要な事は、あなたたち自身がみつけなければならなくなるでしょう。正解はまだ誰もわかっていないのです。
しかし、高校を卒業するあなたたちに、これからの世の中を生き抜くヒントを私から差し上げます。
それは、3つの力です。
一つ目は、知性。それは新たな価値を生み出す創造力です。今までのように、知識をため込むだけの勉強ではだめです。ため込んだ知識を活用して、新たな価値を生み出す力に転嫁する創造力を備えた知性です。
二つ目は、感性です。創造力を鍛えようと思えば、何が求められているのか、人々は何を欲しているのか、世の中はどのような方向に向かっているのか、を感じとる力が必要です。イメージする力が必要です。そんな感性を鍛えてほしいと思います。
そして、三つ目は、個性です。個性ほど誤解されやすい言葉はありません。個性とは、外見ではありません。個性とは、人柄なのです。たった30分話せば、その人がどのような人かが感じ取れます。人柄がわかります。30分話した後に、それでも「この人ともう少し話がしたいな、おもしろいな」と思わせる魅力、それが人柄であり、個性なのです。どうか、外見でない魅力を身につけてほしいと思います。
私は、知性・感性・個性ということを話しました。この3つの力は、あなたたちが、誰も経験していない未来を生き抜くための、鎧であり、盾であり、剣であると思っています。
これからの世の中は、本当に生き抜くのが大変です。凄まじい変化の世の中です。失敗もするでしょう、挫折もするでしょう。しかし、このことだけは君たちに伝えておきたいと思います。人生に躓き、どうしようもない壁にぶつかり、八方ふさがりで、先が見えなくなったら、自分だけで悩まないでほしい。君たちのそばには必ず家族がいます。そして布施高校で共に学んだ友人がいます。そして、恩師がいます。布施高校があります。布施高校は、君たちにとっていつでも帰ってきてよい故郷なのです。そのことを忘れないでください。
これが、私があなたたちに贈る最後の言葉です。
本日卒業証書を授与したすべての人の未来が、幸せなものとなることを心より願って、贐の言葉といたします。
布施高等学校校長 上野 佳哉