やっと、世界標準になる!ー「大学入学共通テスト」

 12月4日、大学入試センターは2021年1月に始まる「大学入学共通テスト」の試行調査(プレテスト)の問題・解答とマークシート式の問題を公表しました。その公表を受けて、本日12月5日の各社新聞の朝刊には、その記事が掲載されています。その見出しを見てみましょう。

=読売新聞=

「プレテスト難易度高く 大学新入試 記述式や図表読解」(1面)  

記述式採点に課題(2面)

課題解決力を適切に測れるか(社説)  

考える力測る 難問多く正答伸びず ページ数大幅増・「解なし」選択肢

=朝日新聞=

大学新テスト出題一変   記述 会話文読み込んで   数学 問題冊子倍増32ページ(1面)

知識「活用」に重点  Tシャツ売り上げ最大になる価格は-資料から考察 正答率6.8%(2面)

「探究的な学び」定着促す(2面)

新大学入試 考える授業への転換を(社説)

「いまの授業では解けない」 生徒「数学でも読解力必要」(37面)

=産経新聞=

問題ページ増 難易度アップ マーク式複数選択の正答率低く(1面)

今回の新大学入試のプレテストについては、難易度がアップした、読解力が試される、考える力が必要だ、いまの授業では解けない、というような評価がおおまかだと思います。なぜ、このような評価になるかというと、共通一次試験から始まった現在のマークシート方式のセンター試験は、知識重視のテストになっており、さらに受験技術を磨けば正解にたどり着くことができるような問題が多いからです。そのような問題に対応するための受験勉強をしている現在の高校3年生からすれば、まったく新しい種類の問題に出くわしてしまったと思うのは当然でしょうね。

 今回の「大学入学共通テスト」のプレテストにみられたような、読解力や思考力を問う問題をみた私の感想は、「やっと、日本の後期中等教育も世界標準に近づいたか!」というものです。日本と欧米諸国の大学入試制度は大きく違いますし、大学のカリキュラムポリシーやディプロマポリシーも違うので、一概に比べることはできません。が、欧米の大学はだいぶ以前から、高校生にそして大学生に「思考力・判断力・読解力」をもとめ、さらにそれを如何に人に伝え、コミュニケーションをとるかという「表現力」をもとめてきました。このような動きは、欧米だけにとどまらず、多くの国や地域で教育改革が行われています。いまやアジアの中では日本だけが「知識偏重の教育」を行っていると言っても過言ではないのです。よく言われるように、アジアや東南アジアの学生と日本の学生がプレゼンテーションやディベートを行うと、日本の学生はほとんどと言っていいほど見劣りをすると言われます。それはなぜか?日本の教育は質は高いのです。しかし学んだ知識を、如何に活用するか、如何に新たな価値を創造するために役立てるかという訓練が学校現場で十分になされていなかったからです。今回の高大接続改革は、大学の教育を変え、そして入試制度や入試内容を変えることにより、高校教育を一変させる「コペルニクス的転換」だと私は思っています。単に、「入試制度が変わったからどのように対処しようか」という小手先の受験技術で対処できるほど今回の改革は生易しくはありません。高校教師にとって、根本的に「どんな力を生徒につけるのか?」「そしてそれをどのように高校3年間で行うのか?」「大学卒業後の社会に必要な力を如何につけるか?」が問われているのです。

 さて、布施高校。この教育改革にどのように向き合うか!私は、布施高校に赴任する数年前からこの「知識の活用」「思考力・判断力・表現力」を育てるにはどのようにすればよいかを考え続けていました。そして、全国で行われている先進的な実践に目を向けてきました。その結果、得られた結論は、「探究的学びの充実」です。3年間の高校教育の中で、この「探究的な学び」どれだけできるかが勝負だと思っています。

 例えば、授業。そこには、文科省が提唱する「主体的で対話的な深い学び」=アクティブラーニング型授業が必要だと考えています。今年は、アクティブラーニング先進県であります埼玉県から指導主事を招いて「知識構成型ジグソー法」の研修会を行いました。その後、少なくない先生方が、このアクティブラーニング型授業を、試行錯誤ながら取り入れています。

 そして、「総合的な学習の時間」には、クエストエディケーションを取り入れました。これは、大阪の府立高校では初めての導入です。このクエストエデュケーションは、10年も前から取り組まれている教育プログラムですが、この間の高大接続改革によって、私立高校も含め多くの学校で取り組まれるようになりました。

 私は、これだけではまだまだ足りないと思っています。もっと「探究的な学び」をあらゆる場面で導入すべきだと考えています。今までの布施高校は、基本3色で彩られていました。それは、「授業+部活動+行事」です。これからは、4色が必要だと思います。「授業+部活動+行事+探究」です。そして、その探究の色に他の三色がどんどん染まっていくことが必要だと思っています。

 「探究的な学び」というと、とてもハードルが高くて不安になるかもしれません。しかし、私はそうは思いません。誰でもがどこでもいつでもできる「探究的な学び」があるのです。それは、読書です。まずは、本を読みましょうといいたい。自分の世界や自分が生活している世界とは違った世界に誘ってくれるのが、読書です。まずは、本を読むところから、「探究的な学び」が始まると思います。

 やっと世界標準に近づいた日本の大学入試。次は世界標準の若者を育てることだ思います。私は、そんな若者を育てる布施高校であることをめざしていきたいと思います。