くり返し積み重ねる時間を経て育つもの
道路わきに赤と白の彼岸花、秋分の日を過ぎて秋が深まる時期を迎えました。
毎朝、生徒の登校を見守ってくれる地域の方と交わした会話です。「今日なんか、さわやかでいいねぇ。遠足に行くとちょうどいいかもね。暑くもなく寒くもなく。もう寒いのはいらん。暑いのもいらん。じゃあ、いつがいいのって聞かれたら・・今やね。」まさにそういう気候です。
9月25日から1年生と2年生が同時に現場体験実習に出かけ、1週間校内は3年生だけになりました。といっても3年生の中でもこの時期、卒業後の進路を決めようと何人かが、こちらは体験ではなく雇用を検討してもらうための現場実習に行っていますので登校している生徒数はもっと少なくなりました。
1年生は初めての実習。5日間、ほとんどの生徒が友だちとペアで行いました。中学生の時に経験した職場体験とはまた違う3年間の積み重ねの第一歩、仕事をする生活の入門編です。誰にでも自分からあいさつ・返事をする、決められた方法で最後まで丁寧に仕事をすることができるように、が目標でした。
2年生は4回目の実習になり、実習がどんなものかイメージを持ちながらではありますが今回も初めての実習先で出会う人たちの中、早く慣れて2週間のうちに自分の得意なことや持ち味を発揮することができ、まわりの人ともリラックスして話ができるようになってほしいと思います。
下級生が実習に行っている間、3年生は通常の授業をしながら来月下旬の実習に備えています。学年全体で定期的に行う最後の実習、一人でも多く卒業後の進路につながる結果を得られるようにしたいと考えます。
本校では1年生の9月から3年間で7回以上の現場実習を行います。1年生から現場を体験する、7回以上実習をくり返し経験に基づいて自分がやりたい仕事・できる仕事を見つけるようにする、2年生まではできるだけ各回で違う職場・職種を経験する、などが本校の特徴です。
実習を体験することで生徒は大きく変わります。仕事につくと、その難しさとともに、できた時・やりとげた時の喜びや任されたりあてにされたりするやりがいを感じます。また、初めて会った人との会話を通じ「はっ」と気がつき自分を見つめ直すことがあります。働く現場でのこれらの経験から自分は何ができるのか、何がやりたいのかを考え、選び、決めることができるようにしようと取り組んでいます。
こんな生徒がいました。1年生の最初の実習は小売店舗で働きました。日ごろから見慣れている商品を店頭に並べる「品出し」や在庫管理をしました。初めての実習で身近な職場だったため大いにはりきって始めたのですが、商品を丁寧に扱うことができなかったり根気強く仕事をすることに課題が見られたりして、期間の中ごろからは「早く終わらないかな、学校に戻りたいな」との様子が見られました。初回の反省をもとに2年生での3回目・4回目の実習では職種を変えて農園芸の補助作業、ビルの清掃・美化、工場で部品の組立の仕事を経験しました。回を重ねるにつれ、生徒の成長もあり、この仕事が最も適していると思うことがあった一方で課題が明確になったこともありました。そして迎えた5回目の実習。生徒自身の希望もあり、初めて介護の仕事を経験しました。デイサービスで施設を利用する高齢の方と話をしたり身の回りの動作を手助けしたりする仕事でしたが、おじいさんやおばあさんと接する時の生徒の優しい表情、手助けできることがないかを自分から探して動くという学校で見ないような生徒の嬉々とした様子がありました。大きな発見です。もちろん学年進行に伴う生徒の成長があってのことですが、5回目にして生徒が「やれる」と思い、周囲もこの仕事ならできるだろう、続けられるだろうと思うことができる職場にたどりついたのです。この5回目の実習で、よい評価を得ることができ、3年生での雇用を前提とした現場実習につなげました。
このような生徒の成長する姿に接し、どの生徒も経験が少ないだけで、くり返し経験し積み重ねることで大きく伸びると確信します。一人ひとりの可能性は、まわりの大人が思うほど小さくはないということも。今の世の中、18歳で就職する高校生は少数派なのかもしれないと思うにつけ、この子たちの成長を間近で見られる今の濃厚な時間を大切に思います。
生徒の成長につながる節目となる現場実習。先生たちにとってはそれまでの指導の成果が試される時であり、実習中に明らかになった課題からその後の指導内容を見つける機会です。3年間、時間をかけ学校と職場で指導を受けて生徒が継続して努力する、そのくり返しと積み重ねの中で成長し突破する力をつける。「やってみよう、やりぬこう」なにわの現場実習のねらいです。