「防犯訓練がありましてな、昨日」
「どんなことしましてん」
「犯人役が『校長出せー』って暴れる設定らしいですわ。ワテは見てへんけど。なかなか、迫真の犯人役やったそうやで、あとで警察の方から聞いてんけどな」
「学校も、最近は正門を施錠してまんな。前は勝手に入ってこれたけど、今はいちいちピンポン鳴らさな入られへん。『まいど、北やんです』って入ってくるねん」
「あんたは御用聞きか。そこも昨日、警察の方に注意されてん。いくら名乗ってても確認せんとあかんでって」
「ワシは『校長出せー』なんて言わへんで、『校長はんはおまっか』って入って来まんねん」
「それで、みんな集まって校長講話をしたんやけど、最近、物騒な事件が多いやん、ああいう悪いことする奴はたいがい弱わそうな相手を狙いよるねん」
「せやなー、ひきょうな奴やからな」
「だから、白杖持って歩いている視覚障がい者は格好のターゲットになる可能性がある。視覚障がいがあると、走って逃げるわけにもいかんし」
「そやな、ワシなんかに金出せ言われてもよう逃げられへんし、相手がナイフ持ってるかどうかもわからへんからな」
「そんな時、北やんやったらどうする?」
「そら、ワシやったら『誰かー、助けてー』って叫ぶわな」
「そうやろ、昨日の講話ではそう話してん。せやけどな、いざという時は声が出ないこともある。こういった練習も必要ちゃうかって話してん」
「大きい声って、なかなか出されへんもんな。特に町中では声出すのも勇気がいるわ」
おわり