「昨日総合防災訓練がありましてん」
「防災でっか。そら大事なことやな」
「大事なことやから、今日はまじめに考えまっせ」
「どうも大阪弁で書くと、まじめに考えてるように見えまへんな」
「せやけどな、防災っちゅうのは命を守ることやから、中身はまじめやで」
「ワシら目が見えへんもんにとっては、地震は恐怖やな。ワシは幸い避難所で数日間過ごした経験はないけど、同じ視覚障がい者の体験談を聞くと恐ろしいわ」
「何が一番大変なんや」
「そらトイレやわ」
「せやな。目が見えててもトイレは大変や。ワテは阪神淡路大震災で実家が被災して、水が出ぇへんでトイレが使われへんようになって、そら大変やったわ。あんまり生々しいことは書かれへんけど、便器なんて使えたもんやなかったで」
「食べるものも大事やけど、出すことも生理的に大事やから、もっとそこに目を向けていかなあかんし、簡易用トイレが今はあるんで用意しとかなあかんな。してへんけど」
「あと、地震はいつ起こるか分かれへん。一番災害が大きくなるのが冬の夕方やって言うわな。これからの季節、ワテにとっては日が暮れるの早なるし、寒いしワテは一番嫌いな季節や。こんな時に仕事の帰りなんかに、大きい地震におうて帰宅難民になったらどうしよかって思うわ」
「そんな時、校長はんやったらどうしまんねん」
「そら、人に頼むしかないわ。『すみません、どこか安全な避難場所まで連れて行って下さい』って」
「そこは大阪弁とちゃいまんねんな」
「まじめな話やって初めに言ってまんがな。あと、長い時間待つ覚悟やな」
「その時もやっぱり困んのがトイレやな」
次回に続く
