「校長はんは、視覚障がいがあるのに、あっちこっちよう行きまんな」
「ワテは昔から、あっち行ったり、こっち行ったりするのが好きやったからな。校長やってて一番楽しいのが、あっちこっち出張できることやねん」
「そら、ただ学校におるんが嫌やからとちゃいまんのか?でも、危ない目におうたことはおまへんのか?」
「そんなんしょっちゅうやで。危ない目やないけど、昨日も校長会である高校に行ってんけど、途中で道がわからんようになってん。何とか行きついたけど、最近こんなん多いわ。それに最近は暗くなるのんが早いですやろ、そうしたら、いくら白杖持ってても電柱にぶつかったり、段差でつまずいたり、落ちたりしまんねやで、そのたびに寿命縮めてまんねん」
「そら危ないな、気ぃつけや。ワシは慣れたところばっかりで、あんまり知らんとこへ行くことはないさかいな」
「視覚障がい者、特に全盲の人にとっては白杖歩行訓練は重要なんや。あっちこっち出歩くのんが好きか嫌いかは人によるけど、安全に歩くことは大事なことや。うちの学校には歩行訓練士の資格を持ってる先生が6人おって、安全な歩行指導をしっかり行ってるんやで」
「へー、6人もおるんでっか」
「うちは、校区内にライトハウスがあるから歩行訓練士を養成しやすいんやけど、地方の学校はほんまに大変なんやて、そういった意味では恵まれていてありがたいなぁ」
「歩行訓練士の養成には、半年ほどかかるんやろ?その間、大阪で生活するのも大変やわな」
「歩行訓練は、学齢の子は発達に応じて導入していくし、専攻科の中途視覚障がいの人も放課後などに受けてはるわ」
「校長はんは受けたことおますんか?」
「ワテは昔少し受けたことあるけど、その頃はまだ必要ないくらい見えてたから、いまは8割は自己流やな」
「そら、危ないな」
次回へ続く
