1学期終業式をおえて

 昨年の終業式は猛暑のために教室での開催、放送での式辞となりました。生徒諸君の体調を考えれば仕方がなかったのですが、やはり一人ひとりの顔を見ながら話をしたいものです。今年は幸い、気温が35度を超えることもなく、無事に体育館で生徒諸君の顔を見ながら話が出来ました。その時に話した内容が以下の通りです。

おはようございます。

 昨年は猛暑のために教室での終業式になりましたが、今年は35度を超える気温になっていませんので、体育館で終業式が出来ました。それでも蒸し暑いですので、できるだけ簡潔に話をします。しっかり聴いてください。

 先日、スポーツのメンタルコーチをしている鈴木さんという方のお話に触れる機会がありました。何千人というアスリートのメンタルコーチをされた方ですが、その方に言わせると、一流のアスリートには幾つか共通の法則があるというのです。

 ひとつめは「弱気である」ということです。一流のアスリートが弱気?意外な気がしましたが、元プロ野球選手でメジャーリーグでも活躍した上原浩治さんは「僕は強い人間ではないのだと思う」と語っています。また、日本競馬界の第一人者、武豊さんは「僕は臆病です。つねに恐怖心を持って乗っている」と語っています。自分が弱い人間であることを自覚している人ほど、準備をして臨む。だから、一流になれるということなのかもしれません。弱いことは恥ずべきことではなく、その弱さから出発することが大切なのでしょう。サッカーの元日本代表の長谷部誠さんもこう言っておられます。「僕がなぜこのように『心を整える』ことを重視しているのかというと、僕自身、自分が未熟で弱い人間だと認識しているからです」。

 ふたつめに大切なのは「感謝すること」だそうです。スキージャンプの高梨沙羅さんは「ジャンプ台にしても、私たち選手が朝、会場に着くよりももっと早く、たくさんの人が来て作ってくれているから飛べるんですね。それを考えると感謝せざるを得ないというか、感謝せずにいられないです」と語っています。ハーバード大学の研究では、感謝を習慣づけることによって脳細胞が増えるそうですし、カリフォルニア大学の研究でも毎日感謝を日記につける習慣を持った人の身体の運動機能は向上し、人間関係も良好になるということが分かっています。感謝することは大事なんですね。

 次の共通項は、「挫折した経験があること」だそうです。ハンマー投げの室伏広治さんは「弱い負荷しか体験したことのない人間は、強い負荷に耐えられない。『負』に対する免疫を作るためにはどん底を恐れてはいけない。いや、むしろどん底をともにすべきだ」と言われています。挫折し、どん底を経験することは人間を成長させる。サッカーの本田圭佑さんは彼独特の言い回しで「怪我はチャンスだ」と言っています。これも同じかもしれません。

 そうは言っても、人間、努力は大切です。これについては、プロボクサーで、日本人で初めてオリンピックで金メダルを獲った村田諒太さんはこう言っています。「努力しても報われるわけじゃない。でも努力しないと報われない」。なるほどと思います。

 一方で、努力について、400メートルハードルの日本記録保持者の為末大さんは、こうも言っています。「努力は夢中に勝てない」。深いですね、この言葉は。しなければならない努力よりも、夢中になって取り組む姿勢の方が...、ということでしょうか。この部分はぜひ皆さん、自分で考えてみてください。

 長い夏休みの間、ぜひ夢中になれるものを探してください。すでに見つかっている方は、引き続き夢中になれるものに夢中で取り組んでください。そして、2学期の始業式で、皆さんの元気な顔に会えることを祈念して、私の話を終わります。