平成三〇年度入学式が挙行されました!

 本日、4月6日(木)平成30年度、74期生の入学式が挙行されました。週間天気予報では、雨マークがあり、「天気はどうだろう・・・、桜はどうだろう・・・」と気を揉んでいました。今年は、異様に早く春が訪れてしまい、正門から体育館に向かうところにある桜も、花は残っているものの葉桜に変わりつつあります。天気は、なんとか持ちこたえたかな・・・という感じで、無事入学式も終えました。

 体育館入り口から入場してくる新入生、まっさらの標準服での登場です。その初々しさに、こちらも1年の始まりとして気が引き締まる思いです。

以下、入学式での式辞を掲載します。

春うららかな今日この日に、多くのご来賓と保護者の皆様のご臨席のもと、平成三〇年度布施高等学校全日制課程入学式を挙行できますことは、本校にとりまして、この上ない喜びであり、心から感謝申し上げます。

 ただ今、入学を許可いたしました、三百二十名の新入生のみなさん、入学おめでとう。みなさんの入学を心から歓迎いたします。みなさんは高校入試という人生最初の試練を見事に克服し、晴れて今日この日を迎えたわけであります。この喜びは、みなさんの堅実な努力の賜であることは、言うまでもありません。これからの長い人生において、今日は、心に残る1ページになると思います。

 さて、新たな高校生活を始めるあなた達に、私から3つの「覚悟」について話をしたいと思います。なぜ「覚悟」を持っていただきたいか?それは、あなた達から日本の高校教育・大学教育・大学入試が大きく変わり始めるからです。つまり、あなた達は「高大接続改革」の第一世代だからです。それでは、その覚悟について話をします。

 第一の覚悟、それは「AI時代に対応できる知識・技能」を学習する覚悟です。「東ロボくん」というのは知っていますか?AIがどこまで発達するかを実験するために、国立情報学研究所の新井教授が開発したAIです。この研究は、実は、今凍結されています。なぜなら、新井教授が「正直言って、東ロボくんの性能を上げるよりも中高生の読解力を向上させるほうが国民としては直近の課題だ」とこの研究過程で、中高生の学力に危機感を感じたからです。新井教授は、この2月には、「AIvs教科書が読めない子どもたち」という本まで出版されています。この本によると、AIは、文章の意味を理解しません。そこに書かれている情報だけを読み取り、ビックデータを元に最適解を導き出します。そこに書かれている文章の価値は見出すことができないのです。ここに人間とAIとの間に大きな差があります。つまり、人間には読解力があるのです。ところが、新井教授が全国25000名の中高生を対象に調査を行った結果、少なくない数の中高生が文章を正確に読み取れないことが分かったのです。きちんと文章を読めば、正解は容易に分かるような問題であっても、それを読み取ることができないのです。この結果から、新井教授は現在の中高生の学力に強い危機感を感じたといいます。まさに中高生自身が、AIのように意味を理解せず情報を摂取しているのです。これでは、情報処理能力に勝るAIには勝てません。

一つ一つの知識技能を学習することは、学習の基本中の基本です。しかし、その知識や技能の意味するところ、その価値も同時に学び、すでに学んだ知識・技能との関連性を持たせていく、それが人間の学びです。

「AI時代に対応できる知識技能」を学習する覚悟を持ってほしいと思います。

 第二の覚悟です。あなた達が学んだ知識・技能を役立てるために、「探究する覚悟」はありますか?

 人間は、なぜ学習するか?それは今まで人類が積み重ねてきた英知を受け継ぎ、そしてそれを発展させ、新たな価値を創造するためです。そのためには、学んだ知識・技能を、知識・技能として頭にとどめておくだけでなく、活用しなければなりません。そのとき必要なことは、「考える」という頭の作業です。言葉で表せば、「考える」というわずか5文字ですが、この「考える」という作業は、とてつもなく苦しい作業です。よく言われる「産みの苦しみ」というものです。しかし、あなた達には、この「考える」ということが求められているのです。私は、この「考える」という頭の作業を「探究」という言葉で表現しています。「探究」は、学習活動だけではなく、行事や部活動でも求められます。人に言われたことだけをするのではなく、どうすればもっとよくなるかを「考える」、探究することが求められるのです。この探究は、一生続くと覚悟を決めてください。高校3年間で探究の基礎を学ぶという覚悟を持って欲しいと思います。

 そして第三の覚悟、それは、「人の世に貢献する覚悟」です。何のために学ぶのか?何のために探求するのか?その究極の答えは、「世の中の役に立つ」ためです。今、日本も含め世界は混沌としています。戦後に積み重ねられてきた様々なルール、合意、常識というものが、大きく転換されようとしています。この流れは、ますます強まるでしょう。あなた達が社会に出るとき、どんな社会が待っているか、誰も想像できない時代なのです。どのように生きていけば良いのか、何が正しいのか、人としての生き方の根本が揺らぎ始めたのです。今、私達は、世界史の転換点の中で生きているのです。そんな時代だからこそ、わたしはあえて言いたい。

「もう一度原点に戻って、世のため、人の為に生きることこそが大切である。」と

高校3年間、様々なことを学習し、経験するでしょう。その学びをどうかあなた達の未来に活かせるように、「将来、私はこれをやって人の役に立ちたい!」というビジョンを描いて欲しい。その覚悟をもってこれからの高校生活を送って欲しいと思います。

今、日本の教育は、大きく舵を切り始めました。その流れはまだ始まったばかりです。そしてその流れは留まるどころか、どんどん加速していくでしょう。なぜなら、日本の教育は世界水準から大きく立ち遅れているからです。

「知識・技能を詰め込むだけの教育から考える力を養う探究する教育へ」

これが世界の流れです。ようやく、日本の教育もそのスタートラインに立ったと私は思っています。

 あなた達のこれからの高校生活、「AIに負けない学びをし、そして考え、探究し、将来を描く覚悟」を持って欲しいと思います。

 ご列席いただいています保護者の皆様、お子様のご入学、心からお祝い申し上げます。今日まで、いろいろなご苦労があったかと存じますが、これでひとまずご安心されたものと思います。私ども教職員は、本日入学したお子様への指導に、渾身の努力を惜しまないことをお誓い申し上げます。私は、入学式のこの式辞で、毎年保護者の皆様にお伝えしていることがあります。それは、高等学校の3年間は、「親離れ」「子離れ」の時期であるということです。わが子を自立させる時期です。今までは暖かく抱きしめ、両手で包み込むように子育てをされてきたと思います。これからは、親の「生き様」を子どもに見せる、「背中で育てること」が大事になります。このことは、新たな大学入試改革が始まり、生徒の「主体性」がより明確に問われる今年度入学生には、さらに重要なことと思っております。家庭でもお子様の「主体性」を育てるために、「考える」・「考えさせる」家庭教育をお願いしたいと思います。

どうか、保護者の皆様におかれましては、本校の教育方針をご理解いただいた上で、「子どもを、主体性を兼ね備えた大人にする教育」にご協力ご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

 最後に、本日入学した七四期生三二十名が、互いに切磋琢磨し、互いに鍛え上げて、大きく成長する集団となる事を願って、私の式辞といたします。

平成30年4月6日

大阪府立布施高等学校  校長 上野 佳哉