9月

9月 

 暑さもおさまり、日ごとに涼しくなってきました。

 今回は二学期の始業式で生徒に話したことをお伝えします。
 作家の朝井リョウさんが高校生に向けての話の中で次のようなことを言っていました。

 都会ではあまり夜空に星は見えませんが、山の中などに行くと星がたくさん見える場所があります。そういった所で空を見上げていると、大きい星や小さい星などいろいろな星が見えます。一つひとつの星が、それぞれの明るさ、大きさで光っています。夜空に様々な星がばらまかれたようです。

 一見バラバラに見える星ですが、いくつかの星をつなげていくと星座になります。例えば白鳥座であれば9個の星がつながってできています。白鳥の頭に当たる星、胴体の星、羽の星といったように、バラバラにしか見えなかった星の一つひとつに意味が出てきます。人から初めて白鳥座を教えてもらった時には「あっ、あの星がそういう風につながるのか」って感じです。

 9月に入るとすぐに文化祭です。何でも一生懸命やった方が楽しいので、生徒の皆さんには一生懸命取り組んでほしいと思っています。

 しかし、例えばこんな疑問があります。

 文化祭を一生懸命して何の意味があるの? もっというと、色々な教科の勉強をしてどんな意味があるの、部活をして何の意味があるの、読書をして何の意味があるの。

 ある程度のことは答えられます。例えば、英語を勉強する意味であれば、将来外国の人が大勢日本に来たときに、英語で話す機会が多くなるからだ、また、ビジネスでのグローバルなコミュニケーションは英語で行われるからだ、といった一般的なことは言えます。しかし、その人自身にとってどんな意味があるのか、未来のことはわかりません。

 文化祭、各教科の勉強、部活、読書。それぞれは、一つひとつの星です。思わぬところで星と星がつながって、それまでバラバラにしか見えなかった星が、白鳥として、ヒツジとして、乙女として、またサソリとして星座を形づくります。一つひとつの星がつながって意味を持ち始めます。

 目の前にあることに対して、今の自分には意味がないからと決めつけて自分の中で切り捨ててしまうのではなく、それに一生懸命に取り組むことが大切です。自分の星を一つずつ夜空に置いていくことが大切です。いつかその星たちがつながって、自分が想像もしていない星座を作り出します。

 だれでもすぐに結果が出ないと嫌になってしまいます。すぐに成果が出ることしかやりたくないという気持ちがあります。しかし、より長い目で見るなら、意味のないことなどないのかもしれません。意味のないと思っていたことが、その星座の大切な部分を形作る要素になるのかもしれません。

 目の前にあることに一生懸命に取り組んでください。今はわからないかもしれないけれど、それが意味を持つ時が来ます。

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