7月

7月

 日を追うごとに夏らしくなってきました。

 先日「WaiWai(ワイワイ)トーク発表会」がありました。
 外国にルーツをもつ高校生が、体験したことや日ごろ思っていること、感じていること、将来の夢などを母語(幼少期に自然に習得する言語)で語る発表会です。
 大阪府内11の高校から21名の参加があり、門真なみはや高校からは3名の生徒が出場しました。そして、そのうちの2名が審査員特別賞に選ばれました。

 3名のスピーチはそれぞれ感動的な内容でした。簡単に紹介すると以下の通りです。

・中国、揚州の自然の美しさ。そこで家族と過ごした温かい日々の思い出。中学3年の時に来日し、日本の学校に通うようになったが、もう再び美しい揚州に戻ることはないと、心落ち込む日々を過ごしていた。しかし奈良にある唐招提寺を訪れ、そこにある鑑真の坐像を見たとき、鑑真が揚州に住んだ僧であり、非常な苦労をして日本に渡り、日本に唐の文化を伝えたことを思い起こした。彼の日本に対する貢献を考えていたら、自分自身も日中友好のために貢献したいという夢が与えられた。

・フィリピンから日本に来たが、自分の日本語がからかわれるのではないかと恐れ、人と話すことができず、つらい日々を送っていた。しかし、勇気を振り絞って話しかけた時、クラスメートがやさしく答えてくれたことがきっかけで、学校行事に積極的に参加するようになった。なみはや高校に入学後は、ダンス部に入部した。男子部員は自分一人であるが、自分からオープンになることで部になじむことができ、目標に向けてみんなでがんばった結果、この3月の大会で優秀賞を取ることがでた。

・日本に来る前は、日本や日本人に対していい印象を持っていなかったが、日本に来てからもその感情は変わらず、中学では些細なことで手を出して喧嘩をすることがあった。クラスメートとの折り合いも悪く、話しかける人も誰もいない時に、同じサッカー部の一人の同級生が話しかけてくれた。その彼と友達と言える間柄になった。その後、別々の高校に進学し、会うこともなくなったが、彼の方から文化祭の時に突然会いに来てくれた。嬉しかった。日本人に親友と呼べる友ができたことの喜びを感じた。

 生徒たちはこれらを自分たちの母語である、中国語やフィリピン語で語りました。
 なぜ母語で話すのでしょう。日本にいるのだから日本語だけを勉強していればいいのではと思いませんか。

 母語を学ぶ理由はいくつかあります。
 人は物事を考えるときに母語を使って考えます。母語を豊かにすることはそれだけ広く深く考えることができるということです。
 卒業後、生まれ育った国に帰る人にとっては、母語は生活するうえで必要な言葉になります。
 一方で、日本に定住する者や、両国の橋渡しとして活躍する者もいるでしょう。いずれの場合も、母語はその生徒のアイデンティティの確立、つまり自分が誰で、自分の立場はどこにあるのかを確かめることに大きな影響を及ぼします。
 母語を学ぶことで、それぞれの生徒が自分の生まれ育った国や地域に誇りと自信を持ち続けてほしいと考えています。その国の背景を持っていることをプラスに考えられることは自尊感情を高めることにつながっていきます。

 なみはや高校には現在70人近くの外国にルーツを持つ生徒がいます。もちろん日本語の勉強をしていますが、並行して、それぞれの生徒の母語を維持・発展させるための授業もあります。現在は中国語、ペルシャ語、イタリア語、スペイン語、ネパール語、フィリピン語、韓国・朝鮮語、ロシヤ語の授業が行われています。

 一人ひとりが自分の母語を大切にし、母語に誇りを持っていてくれることを願っています。

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