(第7話)網膜色素変性症の話(その3)

「先週の話やけど、近畿盲学校水泳大会と教育長表敬訪問があってん」

「へえ、水泳大会はどこへ行って来はったんや」

「和歌山市の秋葉山水泳場ってとこに行って来てん。ものごっつうええプールやったで。そこに中学部と普通科の生徒が出場したんや」

「ええタイム出たか?」

「みんな一生懸命泳いだで、タイムよりベストを尽くす方が大事や。先輩も応援に来てくれたし。みんなよう頑張ってた」

「それで教育長表敬訪問ってのはなんや?」

「今度全国盲学校フロアバレーボール大会に出るやろ。南視覚と一緒に大阪府庁に行って教育長を表敬訪問したんや。ワテの挨拶はいつも通りへたくそなもんやけど、うちのキャプテンも南視覚のキャプテンもめっちゃ上手でしっかりしたもんやわ。感心したで」

「そうか、そんで頑張って来いってか」

「せやな」

「それで色変の話、飛び飛びやな、今の校長はんの見え方からやったで」

「よう覚えてんな。今の見え方はな、視野が5度くらい、視力も必死なって見てあとは半分あてずっぽで0.6くらい何とか出るけど、実際パッと見たところで視力検査表の上から3つ目はよう見えへんな。最近はすれ違った人が誰かもわからへん」

「そういや校長室に入るとき、ワシやワシって言って入ったら、名を名乗れって校長はん言いはるわな」

「誰かわからへんよってにな。いくら北やんでも。それでここからは、色変が国の難病に指定されているっちゅう話にはいるで。ワテは、目医者やないさかいに専門的なことは言えんけど、今の医学では治らんちゅうし、全く見えんようにもなる人もおる。せやから難病なんや。でもiPS細胞に少し期待しているところもあるけどな」

「期待している人は多いやろな」

「それで、色変で全く見えんようになった人の話を聞いてると、あるところから急に見えんようになったってよう聞くんやわ。実はワテが今そのような時期かもしれへんねん」

「ほんまに?」

「嘘言ってどないすんねん。そういう時期があることらしいわ。よう聞くのんがこの時期に引きこもってしまう人が多いちゅう話や」

「そらショックやろな」

「ワテかってショックやで」

「そんなように見えんけどな」

「まあ、いつか急に見えんようになるとは思ってたんでな、いよいよかって感じやな」

「校長はんやったら目えつぶってでも歩けるやろ」

「そんなわけないやろ、何度も階段踏み外したり、つまずいて転んだりしてるで」

「わしは小さい頃から見えてへんよってに、慣れたところやったらさっささっさと普通に歩いてるけど、やっぱり危ないわな、見えてへんと」

「ワテは暗いところはほとんど見えへんから、暗いところを歩くときは耳をよく澄ましてるねん。けど、足の裏で点字ブロックを識別する力がまだまだやな。最近はよく点字ブロックの上を足の裏の感覚を澄ませて歩いてるわ」

「いろいろ努力してんねんな」

「きっと、同じ色変で急に見えにくうなった人で悩んでいる人もおると思うねん。そういう時は引き込もらんと視覚支援学校などに相談してや。理療科のページも見てな」

(次回へ続く)