「ところで校長はんは府立盲学校出てるそうやけど、何で盲学校に入りましてん?」
「ワテは、もともと理学療法士になりたかったんですわ。話は長うなりまっけど、そんで、大阪のあるリハビリの専門学校を受けたときにな、面接があって、その時に『何で理学療法士になろうと思ったんでっか』って聞かれましてん」
「大阪の専門学校ってのは面接官もそんな大阪弁で聞きまんのか?」
「そんなわけないやろ、あんたと話してるから大阪弁で話してまんねや。それでな、実は、網膜色素変性症っていう目の病気で、将来のために手に職をつけたいと思いましてんって正直に答えたんですわ」
「ふつうは、建前でも理学療法士になりたいって強い決意を言うもんとちゃいまんのか、そんな後ろ向きな面接の答えはあきまへんやろ」
「その時はな、なぜかそのように本音で答えましてん。そしたらな、その日の夜に、うちに面接官の先生から電話がおましてんや」
「ほう、何んて」
「その先生がな、私もあんたと同じ網膜色素変性症でんねん、あんたの気持ちようわかりますわって、その電話の中で色々と色変のことを教えてもろて、そのあと、大阪府立盲学校、今の大阪南視覚支援学校に理学療法科があるねんけど知ってまっか?って聞かれましてん」
「府盲の理学療法科は盲学校では有名でっせ」
「でもワテはその時知らんかったさかいに『知りまへん』って答えましてん。そしたら盲学校やったらあんたの見え方にいろいろと配慮してくれまっせって言いはったんですわ」
「そんでどないしましてん」
「あんまり盲学校にいいイメージがなかったんでな、なんか暗いっていうかそんなイメージでんな。せやから、『ああそうですか』って適当に返事してましたらな、それを察してか、『盲学校って名前が嫌やったらうちの専門学校に来てもろてもかまへん、ただ、盲学校は学費はかかりまへんで』って言われましてん」
「せやな、盲学校は学費はいらんし、就学奨励費ってのもあって所得に応じて給食費とか通学費とかの補助があるもんな」
「ワテはそんなん知らんさかいに、『え?ただ?』って聞き直しましてん。うちは母子家庭で、大学出してもろて、その上さらに専門学校のお金出してくれって親に言えまへんから、親戚に借金する話ができ上ってましてん。それが要らんようになるさかいに、その話に飛びつきましたんや」
「そういうきっかけで盲学校に入りましたんか」
次回へ続く