「おかえり!」
「おかえり!って、北やん、何で勝手に校長室入って、しかもソファでくつろいどんねん、お茶まで出してもろて」
「まいど、校長はんいてまっかって来たら、もうじき帰ってきますよってに中で待っててくれって、おたくの事務室の人は親切でんな、わざわざお茶まで出してくれて」
「そんな事せんでもええって言っとくわ」
「今度は、高等部の普通科が宿泊学習に行ってましてんな、ブログ見てると楽しそうでんなぁ。そんで、校長はんはどこ行っとりましたんや」
「今日はな、大阪駅の横にあるホテルグランビア大阪で「朗読録音奉仕者感謝の集い」ってのがあって、そこに出席してましたんや」
「何でんねんその感謝の集いってのは」
「視覚障がい者のために朗読録音をしてくれるボランティアの人に感謝状と花束を渡す催しですわ」
「また居てるだけの参加でっか」
「ちゃうわ、感謝のことばを述べて、花束を渡す仕事があんねん」
「そらご苦労さん、いつも忙しいでんな」
「北やんは読書なんかしまんのか」
「ワシはあまりせえへんな」
「今は読書バリアフリー法ってのがあって、国立国会図書館では蔵書のデジタル化がどんどん進められているし、サピエ図書館ってのもあって、視覚障がい者の読書環境がどんどん良くなってるねんで。知っとったか北やん」
「聞いたことはあるけどな、ワシは本読んでもろても、聞いとったらすぐに寝てしまうよってに読書には向いてへんねん」
「でも、受賞された方の朗読録音を聞いてたら、本の中に吸い込まれそうないい感覚になったで、聞いたのはそれぞれ1分間だけやったけど、もっと聞いてたいなぁって思たわ」
「でもワシは自信ないな、おもろい話やったら起きてるやろけどな」
「本はな、表面的におもろいとかおもろないとかやのうて、そこに書かれている奥深い意味を味わうもんやで」
「ほな、このブログにも奥深い意味がありまんねんな」
「本とちゃうわ!」
おわり