(第18話) 点字の初期指導は絶対必要でっせ

「校長はんは盲学校長いし、当然点字はできまんねやろな」

「当然って...北やん、それは聞かんといてーな。盲学校生活25年、けどできまへんねん。はずかしながら」

「何でやねん。25年も盲学校に勤めながら」

「ワテがおった南視覚の理学療法科は、基本的に弱視者対象やったさかいに、点字で教えたことがおまへんねや。ただ、年に1回、点字使用の友だちに年賀状を書く時だけ点字を打ちまんねん」

「表記ぐらいはわかりまんねんな」

「年に一度やから、その都度見ながらやけどな。でもな、最近は白い点字用紙に浮き出た点字は目で見ても見えへんし、指で触っても分からへんねん。ほんまに点字難民ですわ」

「そら、難儀やなぁ。点字は指で触って読むもんやから、これから指で読む練習しなはれ」

「この年で今からできるやろか? 指先乾燥してつるつるやで」

「感覚あれば大丈夫や」

「でも、点字の初期指導は絶対必要でっせ」

「読み書きそろばんは学習の基本やさかいにな」

「今はパソコンやスマホなどあれば本を読まんでも情報はいくらでも入って来るけど、学習に文字は絶対に必要なんや」

「そらそうや」

「でも、点字指導の授業見たら、先生も子どもも真剣にやっとるで」

「そら指先に気持ちを集中してせんとあかんもんな」

「ここからいろいろな学習の世界が広がっていくんやなぁ。ただ、学習の導入は子どもの発達に合わせてするらしいんで、子どもによって学習を始める時期に多少の前後があるんやて」

「そら無理やり教え込んだら嫌がってしまうこともあるからな。ワシが小学部で教わったときはむちゃくちゃ厳しかったで、泣きながら点字覚えたもん、ほんまに」

「昔は何でも厳しかったなぁ」

次回に続く