(第19話) そろばんは筆算の代わりやて

「今度は小学部が修学旅行に行ってまんねんな。ええ天気やし楽しそうでんな」

「せやねん。それに今日10月10日は中学部が万博に校外学習に行ってまんねんで」

「へー、万博は今えらい人気で、前売りチケットがあっても入られへんらしいから貴重やな」

「それに前に校長ブログで書いたLove Stone Projectでハート形に磨いた石を並べて完成させるねん」

「そうかいな。そらええ思い出になるな」

「そっちは学校日誌で中学部から上がると思うで。知らんけど」

「校長やったら、知らんけどやのうて、ブログに上げなはれって命令しなはれ」

「わかった。命令しとくわ。ところで、北やんは計算って、どのようにしてやりまんねん?」

「急に話変わるなぁ。ワシは、計算は得意やで。頭の中にそろばんが入っとるさかいにな。多少の計算は暗算でしまっせ」

「そらすごいでんな。ワテは暗算なんて一桁、よう頑張って二桁の足し算引き算ぐらいやろか。最近はあまり計算しまへんからな」

「電卓やパソコンみたいな便利なもんがあるさかいに、頭使わんでもええからな」

「前に頭の体操にって、インド式計算術とかいう二桁の掛け算の問題集買うて、ちょっとやってみたけど、すぐに挫折して、そのままほったらかしになってますわ」

「退職してからでも、そろばん教室行って、小学生と席並べて『願いましては...』ってやっときなはれ」

「いくら何でも、子どもと一緒に席並べてってのは勘弁してほしいわ。...ちょっといらん話が長ごなってしもたけど、視覚支援学校では計算力を高めるためにそろばん指導をしてて、北やんみたいに頭の中にそろばんが出来上ってる人もおるんやてな」

「ワシは売上計算せなあかんさかいに、今でも毎日そろばん使こてるよってにな」

「見えてる人は、電卓がなくても紙があれば筆算で計算するけど、点字では筆算は難しいさかいにそろばんが必要なんやな」

「ワシはそんなん考えんと使ことったけど、晴眼者もそろばん使こてはるやん」

「まあ、そうやけどな、でも、視覚障がい者用のそろばんって、ちょっと普通のそろばんとちゃいますな」

「珠のところがちょっと違ごてて、珠が回りまへんねや。廊下でスキーごっこができまへんで」

「そんなことして遊んとたら怒られるで。でもな、その視覚障がい者用のそろばんが製造中止になるとかいう話やて、どうなんねやろな」

「そら、困まったことやな、普通のそろばんもユニバーサルデザインで視覚障がい者用と一緒にしたらええのにな」

「そら、ええ考えやな、スキーごっこもできへんし」

次回へ続く