AIは人間を凌駕することはできない!

 1月6日の読売新聞で、以前紹介した新井紀子氏の記事が紹介されていました。「2017問う」というシリーズです。

 新井氏は、「ロボットは東大に入れるか」というテーマをかかげ、2011年から「東ロボ」プロジェクトに取り組んできました。その結果、「東ロボ」君は、有名私立大学には合格できる力までレベルまでになったといいます。しかし、AIは、所詮、「『何をするか』というフレームを人間からあたえられなければ、なにもできない。だから人間を超えられません」と結論づけています。

 しかし、逆に言うと枠組みの中で情報を処理する能力は、すでにAIが人間を上回っているということです。このことがどういう影響を与えるかということを新井氏は次のように指摘しています。少し長くなりますが、教育の分野でかなり考えさせられる内容なので、引用します。

「 AIの方が人間よりうまくできる作業は、当然、AIが行うようになる。

例えば、会計監査や銀行の融資審査などはエリートの仕事というイメージが強いけれども、多くは枠組みの中でデータを分析する作業であり、AIが得意とするものです。製品のセールス業務なども、消費者の使用データから買い替え時期を割り出すAIが受け持っていく。そうすると、ホワイトカラーの人たちの半数くらいはAIに『仕事を奪われる』。

 その時、人間が携わるのは、高い想像力や重い責任が求められるためAIにはできない仕事と、AIより人間を使う方が安いから人間にさせておく仕事に、二極分化すると思います。(中略)

 次代を担う子どもたちがAIを使う側になるか、使われるかは、教育にかかっています。AIは暗記と手順通りの作業が最も得意です。だから、現在のような、暗記力を重視する教育では、AIにかなわない子しか育ちません。

 大切なのは、物事の意味を理解し、思考し、表現できる力を養う教育です。AIが最も困難とするところだからです。」

ところが、現状は、このようになっていないと新井氏は指摘します。思考力・判断力・表現力の力を養なわなければならないにも関わらず、東ロボ君が不得意とする読解力の分野でさえ、中高生が劣ると指摘しています。その原因を次のように指摘しています。

これはツイッターなど、ごく短い情報やおもいつきをやりとりするSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に、コミュニケーションや知識獲得の場が偏っている影響でしょう。

 家の中に新聞や本のない家庭が増え、スマートフォンの画面を見るばかりで、論理的に構成された文章にほとんど接していない子どもが多い。」

いかがですか、みなさん。新井氏の指摘は、本当にいろいろ考えさせられます。

生徒の皆さん、本を読んでいますか?新聞は読んでいますか?新井氏が危惧されるようなことを私も危惧しています。つい最近、PISAの結果が発表されました。日本の若者の読解力が低下しているという結果です。いままで日本の教育は、良質な労働力を育成するために処理能力を高める教育を行ってきました。それは高度経済成長期にはかなりの成果を上げ、世界からも注目されたのです。しかし、今は、時代が違います。これだけ不透明で先行きが見えない社会で必要な力は、AIが得意とする処理能力ではなく、知識と知識を結び付け、新たな意味づけを行う力です。すなわち、新たな価値を創造する力なのです。この点に力点を置いた教育が求められていくと思われます。世界の教育は、すでにこの方向に舵を切っています。シカゴのアムンゼン高校の授業を体験した生徒の皆さんは、そのことを実感したと思います。

 ただ、このように言うと知識獲得が重要でないように思う人がいますが、それは違います。今までの知識獲得の教育は、今まで以上に大事です。その上に、その知識の意味をどれだけ理解しているか、活用できるかという力が求められるのです。大変な世の中になってきました。2017年、布施高校の教育の在り方も改革を進めていきたいと思っています。