彼女のスピーチに感動した!

1月10日(火)、家に帰ってNHKの9時のニュースを見ていました。目に飛び込んできたニュースが二つありました。そのうちの一つを紹介します。もう一つは、別の機会に紹介したいと思います。

 紹介したいのは、ハリウッド映画記者協会が優秀作品を選ぶゴールデングローブ賞の授賞式での女優メリル・ストリーブさんの受賞スピーチです。彼女をご存知ですか?私は彼女が出演した「プラダを着た悪魔」が大好きな映画の一つなのですが・・・。

 彼女は、スピーチの中で障害のある記者の物まねをして侮蔑したトランプ次期大統領を痛烈に批判したのです。名前こそ出しませんでしたが、会場にいた誰もが、批判されているのはトランプ氏だとわかりました。そのとき、彼女は目に涙を浮かべながら、「こんなに悔しいことはない」という表情で訴えました。聞いていたハリウッドの男優・女優全員が、彼女のスピーチに感動している様子がテレビ報道されました。

 私が、彼女のスピーチを素晴らしいと思ったのは、彼女は、彼女の言葉で、彼女しか話せないような言葉で、アメリカの多様性の重要性を、人権の大切さを、差別への怒りを語っていることです。「多様性」「人権」「差別」など、このような言葉を使えば、簡単に相手に話す者の意図は伝わるでしょう。でも、心まで伝わるでしょうか?そんな決まりきった言葉を使わずに、相手に自分の伝えたいことを伝えること。それが、素晴らしいと思いました。

 彼女は、このように述べています。彼女のトランプ氏への思いを述べた部分、彼女が涙を浮かべてスピーチした英文を載せます。彼女の思いを噛みしめてほしいと思います。できれば、日本語訳でよいので、スピーチ全文を読んでみてください。お願いします。

There was one performance this year that stunned me. It sank its hooks in my heart. Not because it was good. There was nothing good about it. But it was effective and it did its job. It made its intended audience laugh and show their teeth. It was that moment when the person asking to sit in the most respected seat in our country imitated a disabled reporter, someone he outranked in privilege, power, and the capacity to fight back. It kind of broke my heart when I saw it. I still can't get it out of my head because it wasn't in a movie. It was real life.

And this instinct to humiliate, when it's modeled by someone in the public platform, by someone powerful, it filters down into everybody's life, because it kind of gives permission for other people to do the same thing. Disrespect invites disrespect. Violence incites violence. When the powerful use their position to bully others, we all lose.

日本語訳

けれども、ある演技には、あぜんとさせられました。それは私の心に釣り針のように引っかかりました。演技が良かったからではありません。ただ、何一つ良くはないのに、効果的でした。そして、狙った観客を笑わせ、歯をむき出しにさせました。

 それは、この国で最も尊敬される席に座りたがっている人が、障害を持つ記者の物まねをしたときのことです。特権、権力、反撃力において、はるかに自分が勝っている相手に対しての行為です。

 その光景に私の胸は打ち砕かれ、いまだに頭から離れません。なぜなら、映画の世界ではなく現実で起きてしまったことだからです。

 権力者が公の場で他者をばかにしようとする衝動に身をゆだねてしまえば、あらゆる人たちの生活に波及します。人々に同じことをしてもいいと、許可を与えることになるからです。

 侮蔑は侮蔑を招きます。暴力は暴力をあおります。権力者が立場を利用して他人をいじめれば、私たちはみな負けるのです。