4月11日付で「東日本大震災により被災した児童生徒又は原子力発電所事故により避難している児童生徒へのいじめの防止について」という文部科学大臣からのメッセージが発せられました。以下、その内容を掲載します。横浜でのいじめ事件をきっかけにこの問題が取り上げられ、全国レベルで調査が行われ、このいじめが横浜での事件だけではないという実態が浮き彫りにされました。
あの大震災が起こったとき、「きずな」という言葉が日本国民の心の中に刻まれたと思いました。事実、多く人たちが被災地にボランティアとして出向き、被災した人たちへの支援に向かいました。この「きずな」は本物だと思います。しかし、一方でこのいじめ事件。いったいあの時の「きずな」って何だったんだろう?私たち日本人ってこんな弱さを持っている国民なんだ・・・と改めて考えさせられました。今年、2年生は東北に修学旅行に行きます。この修学旅行をきっかけにして、「私たち日本人の弱さって何だろう?」ということを考える事が出来たらと思います。
東日本大震災により被災した児童生徒又は原子力発電所事故により避難している児童生徒へのいじめの防止について(文部科学大臣メッセージ)
平成29年4月11日
(児童生徒の皆さんへ)
東日本大震災により被災した児童生徒または原子力発電所事故により避難している児童生徒(以下「被災児童生徒」といいます。)の方へのいじめが起きています。震災や避難生活によりつらい思いをされている方を、さらに傷つける行為は、決してあってはならないと思います。
東日本大震災から6年がたちました。現在でも、震災により受けた被害や傷をかかえながら過ごされている方、ふるさとをはなれて避難生活を送られている方が多くいらっしゃいます。その方々は、つらい経験を乗りこえ、未来に向かって、日々、一生懸命頑張っておられます。皆さんのまわりにも、同じように頑張って学校に通っている友達がいると思います。
いじめを防ぐためには、相手の立場になって思いやりをもって行動することが必要です。震災を経験して、ふるさとを離れてなれない環境の中で生活を送る友達のことを理解し、その方によりそい、一緒に支え合いながら学校生活を送ってほしいと思います。また、放射線について科学的に理解することも大事なことです。そうすれば、皆さんが、こうした友達へのいじめをする側にも、見て見ぬふりをする側にもならず、いじめをなくすことができると私は信じています。
このことは、被災児童生徒の方へのいじめに限ることではありません。全てのいじめについても同じことが言えます。新学期を迎え、皆さんが、相手の立場になって思いやりをもって行動し、その結果、いじめが学校からなくなることを心から期待します。
(保護者、地域住民の皆様へ)
子供たちは、親や地域の大人の言動を見ています。被災児童生徒へのいじめの背景の一つには、避難されている方々への誤解や、被災地の状況や放射線に関する理解不足からくる、大人の配慮に欠ける言動があるとも考えられます。まずは大人である私達が、被災された方々、故郷を離れて生活をされている方々の思いを理解すること、放射線について科学的に理解するとともに、科学的に思考し情報を正しく理解することが必要です。現在でも、PTA関係者をはじめとする保護者、地域住民の方々が、教育委員会・学校と連携して、被災地の状況や放射線に関する理解を深めようとする取組が進められています。引き続き、保護者、地域住民の方々と教育委員会・学校が連携し、子供たちにおけるいじめをなくす取組を行っていただきますようお願いいたします。
(教育委員会等の職員・学校の教職員の皆様へ)
各教育委員会、学校等におかれては、平素から、被災児童生徒へのきめ細かな対応や心のケアの充実等に御尽力いただいております。今般、福島県から避難している児童生徒に対するいじめの状況等の確認に係るフォローアップ結果を公表しましたが、被災児童生徒がいじめを受けた事案が発生しております。その中には、教育委員会及び学校がいじめ防止対策推進法等に則った適切な対応を行わず、被害を受けた児童生徒が深く傷つく結果となった事案もありました。
東日本大震災から6年が経過した現在でも、多くの被災児童生徒が、震災による心身への多大な影響や、慣れない環境への不安感等を抱えながら生活をしています。各学校において、児童生徒が放射線に関する科学的な知識を身に付け、被災地の状況に係る情報を正しく理解できるよう、取組をお願いいたします。そして、改めて、心のケアをはじめとする被災児童生徒に対する格別の配慮を行うとともに、周囲の児童生徒が被災児童生徒に対して温かく接するよう、日常的な指導の徹底をお願いいたします。
平成29年4月11日 文部科学大臣 松野 博一