校長としての学びシリーズ5 SDGsカードゲーム体験会

 シリーズ4まで、今年の「校長としての学び」を時系列に紹介してきましたが、今回のシリーズ5は、最新の学びを紹介したいと思います。12月27日 19:00~21:30まで「SDGsカードゲーム体験会」に参加してきました。「ナニそれ?」と思われる方も多いと思いますので、SDGsとは何かから紹介したいと思います。

1.SDGsとは?

 最初にSDGsとは何かから紹介します。以下は外務省のwebpageからの引用です。

 持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っています。SDGsは発展途上国のみならず,先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり,日本としても積極的に取り組んでいます。

1~6は、飢餓や貧困、健康や教育に関すること、7~12は、働き甲斐や経済成長、街づくりなどの話題があります。そして13~15は、気候変動や環境問題です。最後のふたつ、16と17は、これらを達成するための条件として「平和とパートナーシップ」を掲げています。詳しくは、外務省のwebpage(下記のURL)を検索してください。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

2.なぜ、SDGsに注目したか?

 ご存知のように布施高校は昨年度より教育と探究社が開発した「クエストエデュケーション」に府立高校で初めて取り組んでいます。来年度から「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」に変更され、より「探究的な学び」にシフトします。その動きの先取りを行った取り組みです。今年になって、他の府立高校から本校の取り組みについての問い合わせが増えているのもその現われだと思います。

 昨年度は、「企業探究コース」に取り組み、今年は「困っている人を助けよう!」というコンセプトで開発された「ソーシャルチェンジコース」に取り組んでいます。各クラス、各グループで取り組んでいるテーマを見学しに行くと、多くのグループで社会問題をテーマに取り組んでいることが分かりました。そこでふと思ったのです。この取り組みとは、SDGsに関係する取り組みなのではないかと・・・。この「ソーシャルチェンジ」という取り組みをSDGsに位置づけながら取り組めば、生徒達の視野がより広がるのではないかと思ったのです。それならば、まず「私、自らがSDGsの取り組みを学ぼう、体験しよう」と参加したのが、今回のカードゲーム体験会への参加の動機です。

3.カードゲーム体験会に参加して・・・

 さて、カードゲーム体験会に参加した報告です。師走の27日、それも夜の7時からという体験会にも関わらず、定員10名のところに21名の参加者です。そのほとんどは、民間企業の方々。教育関係者は私を入れて2名。もう一人の方は大阪の某私立高校の社会の先生でした。さらに、ビックリしたのは、なんと一人高校生の参加がありました。それも加古川市在住の高校生です。ファシリテーターが参加理由を問うと、「SDGsに興味があったのです」と。彼のような高校生に出会うと、とても嬉しい気持ちになります。

 カードゲームのルールについては、イマココラボという団体のwebpageに掲載されていますので、ここでは省略します。関心のある方は、下記のURLにアクセスしてください。

https://imacocollabo.or.jp/games/2030sdgs/

 さて、ゲームは席が隣の人とチームで開始です。私たちのチームのゴールは、「大いなる富」。ゲームの終わりに、「1200G以上の富を保持していること」がミッションです。各チームがそれぞれのゴールを与えられているのですが、まるで価値観が違うゴールです。現実世界を象徴的に体現しています。ゲームは、前半8分、後半15分で行われます。前半の8分、私たちのチームもそうでしたが、おそらく他のチームも自分たちのゴールだけを目指して、様々なやり取りを行いました。そして、8分が終了してファシリテーターが「さて、今は、202×年、世界の状況はどうなっているでしょう?」とホワイトボードを見ると、

 経済・・・16ポイント 環境・・・10ポイント 社会・・・1ポイント

という状況です。つまり、世界は好景気に沸いていて、環境問題にも取り組んでいるが、差別や貧困、働きやすさなどは、皆目ダメという状況。自分の言いたいことも言えないお寒い状況です。そして、この時点でゴールを達成していたのは、5/10チームです。そこで、ファシリテーターはいいます、「各チームのゴールの後半に書いていることにも注目してくださいね」と。何の事かというと、私たちのチームのカードにも次のように書いてあるのです、「1200G以上の富を保持している。得た富を十分に利用できる豊かな社会が整っている」と。前半戦では、各チームは、自分のミッションを達成することに躍起になってしまい、ミッションの後半の「豊かな社会の達成」に目がいっていませんでした。

 そこで、後半戦スタート。5分が過ぎたあたりで、あるチームから「まだ、ゴールを達成していないチームがありますか?」という声が上がりました。そうすると、ゴールを達成していないチームが2チーム。そのチームのゴール達成のために、各チームが協力できることを話し合います。そして、全チームのゴールが達成されました。その時点での、世界の状況は、社会のポイントがとても低い。この状況を解決するために、各チームが為し得る資源を提供し、全チームで話し合いを始めました。あとでファシリテーターが「擬似国連ですね」と評した話し合いです。こうして、最終的にゲームが終了した時点での世界の状況は、環境だけが8ポイントで、他は10ポイントを越える状況でした。「SDGs、98%の達成率」という評価でした。

 ゲーム終了後の世界の状況は、参加した人たちの意志によって決定されていきますので、人やグループによってずいぶんと結果が変わるようです。実際、経済だけがダントツに伸びて、環境も社会も伸びていない結果を経験したとファシリテーターは教えてくれました。このSDGsを達成するためには、最後の二つのゴール、「平和とパートナーシップ」という考えがとても大事で、ゲームの中で生まれた「擬似国連」のような話し合いがとても重要であることを実感しました。つまり、どのプロジェクトを実現するか、またはしないか、そしてどのように行うかの戦略と戦術です。

 最後に、このSDGsカードゲームは、企業の研修や大学・学校現場でかなり実践されているとのことです。中々の優れものだと思います。もし、SDGsやこのカードゲームに興味があれば、私に声をかけてください。どうすれば、布施高校でSDGsに取り組むことができるか、共に考えてみたいと思います。