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校長としての学びシリーズ7 新たなキャリア教育を探して・・・

 11月3日に福岡で開催された「キャリア教育in Fukuoka」に参加してきました。私の目的は、JTBが開発したCASプログラムを体験することでした。CASとは「CAREER AXIS SUPPORT」の略です。AXISとは軸のことを指します。このプログラムは、JTBが東京学芸大学の監修をうけ、マイナビと共同開発した高校生向けのキャリア開発プログラムです。

 なぜ、このプログラムを体験しようと思ったか?私は、前々から元京都大学の溝上教授が河合塾と提携して実施している「トランジション調査」に関心があって、研究成果が発表されるたびに発表会に参加していました。この調査は、高校2年生を対象にどのような資質や能力をもった生徒が、大学・社会人で伸びていくのか(または伸びていかない、現状で留まるのか)の調査を10年間かけて行う調査です。現在のところ、研究成果として明らかになっているのは、高校2年生の段階で「将来に向けたキャリア意識が高い」生徒が、大学入学後も様々な点で資質や能力を伸ばしているという事です。この調査の詳しいことを知りたい方は、溝上教授の以下のサイトにアクセスしてください。

http://smizok.net/education/subpages/a00013(transition2).html

 私は、溝上教授の研究から「2年までのキャリア教育が今後の生徒の人生に大きく影響を与える」と考えて、昨年度には、1年次でのクエストエデュケーションという探究学習を導入しました。今年はその流れを引き継ぎ、2年の先生方が新たな取り組みを二つしてくれました。6月に実施された「夢ナビライブ」への参加と11月に実施された「仕事を知ろう」です。特に、11月に実施された「仕事を知ろう」は、先生方が企業や団体を訪問し、生徒への講話を依頼した手作りの企画で、大きな成果を上げたと思います。

 そこで、これらの新しいキャリア教育の流れを「一本の串」で貫くものは何かと考えていたときに出会ったのが、このCASプログラムなのです。キャリア教育というと、大阪では「就職や専門学校を希望する生徒向け」と思われている節があります。また、進路指導やキャリア教育といえば、「イベント」に流れがちです。つまり、「進路別説明会」とか「分野別説明会」等を開催し、大学や専門学校、企業の方から話を聞いて終るという取り組みです。が、進んでいる他の地域では、そのようには捉えていません。「キャリア教育とは、どのように生きるかを考える『生き方』教育」と考えられているのです。このコンセプトには、就職とか進学とかの区別はありません。そこにあるのは、「どのような生きかたを自分はするのか」という「軸=AXIS」を見つけることに重点が置かれます。

 福岡でのCASの体験は、大変収穫がありました。私がめざしているものがそこにありました。偶然にも、ここで出会ったキャリアコーディネーターさんは、夏に開催された「未来マナビフェス」で私のポスターセッションの話も聴いていただいた方でした。話はとても盛り上がり、12月1日に開かれた「キャリア教育について語ろう」にも参加することになり、そこでも新たな学びの出会いがありました。リクルートが発行する「ケイコとマナブムックシリーズ」の編集長と同じ班になり、大いにキャリア教育に語り合いましたし、東京の高校の先生や、民間企業の方、新たなキャリアコーディネーターさんとの出会いもありました。

 このCASプログラム、布施高校で導入するかどうかは、まだ決まっていません。2月に先生方にもこのCASプログラムを体験していただき、先生方の判断を聞いてから決めようと思っています。世の中では「校長のリーダーシップ」という名目の下、なんでも校長が決定すればできると思われているかもしれませんが、教育はそういきません。教育には常に「心」が必要だからです。いくら優れたプログラムでも、先生方がやる気にならなければ、その効果は半減以下になります。まさに、「仏作って魂入れず」状態です。今後の動きに注目してください。