No.38 本のある人生(2学期終業式)

 先週、2年1組の谷澤花梨さんが日根野高校代表として、大阪府中高生ビブリオバトル大会に出場し、とても素晴らしいプレゼンテーション(「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた」という本の紹介)を聴かせてくれました。そして、見事に優勝。大阪の高校生のNO.1ビブリオバトラーとなりました。大阪NO.1の「本の語り部」が日根野高校にいるというのはすごいことで、私も彼女に負けないようにもっともっと本を読んでいきたいと思います。私は毎日2時間ほど通勤時間がありますので、そこを中心に読書をします。本は学校の図書室・市立図書館・近所の大学の図書館で借ります。割と何でも読む方ですが、最近は仕事がらみで社会学や社会政策に関する本を読むことが多く、結構疲れます。そんなとき気がつけば小説を手にしていることが多いように思います。仕事でどんどんと尖っていくだけの自分の心を小説が柔らかく豊かにしてくれるからでしょうか。

 さあここでよく思うのですが、この心の豊かさとは一体何なのでしょうか。考え方は大きく2つあります。まずは「豊かさなんだから、何だかんだ言っても最後はお金にいきつくものでしょう。」という考え方。もうひとつは「心のことだから、お金では計れない何か。」という考え方です。豊かさをお金の量に換算して幸せを感じる、ということは否定できませんし、GDPという言葉に象徴される経済の大きさ強さと幸福感は無視できるものではありません。お金があるから心の余裕が生まれ、それが他者への寛容の心やいたわりの心に繋がる。だいたいそんな考え方です。それに対し、お金で豊かさを感じようとしても、どんどん欲望が拡大していくだけで、欲しかったものを手に入れて一時満足しても、手に入れた瞬間もっと手に入れたいものへの渇望が生まれ、欲望は留まることがない。今までは満足できたこともそれが当たり前になると満足のバーが上がっていくだけできりがない、という考え方があります。ちょっと前、「世界で最も貧しい大統領」として注目されたウルグアイのムヒカ前大統領なんかもこの考え方ですし、もとはと言えば40年以上も前にブータン王国のワンチュク国王が提唱されましたGNH(国民総幸福量)の概念もこれに近いものだったと思います。

 そもそも、お金のあるなしと豊かさは切り離して考えた方が良いのかもしれません。お金がたくさんあっても幸せではない人生はありますし、お金があんまりなくても幸せで豊かな人生はあります。ですから、大事なことは「お金のあるなしだけに囚われない幸福の定義」を自分で見つけ出しておくということで、40年前にブータンのワンチュク国王はそこをGDP(要するに設備投資額と個人消費額の総和)に対してGNH(人への寛容性、健康状態、教育水準、自然環境、地域性、自由な時間、の総和)という概念で表現されたということだと思います。

 話を戻しますが、一冊の本と出合うことで人生が変わることがあります。人生の豊かさや幸福感が変ることがあります。それだけ私達の人生の豊かさは文字や言語の力の影響を大きく受けるということです。それなのに何となく本から遠ざかって、人生との出会いや輝きを見逃してしまうのはもったいないし、読書で読解力がパワーアップすれば学力アップも約束されたようなもんです。みなさんも冬休みに是非1冊、本を読んでみてください。そして、感動を受けた本をお互いに紹介し合いたいですね。きっと楽しいですよ。

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