No.44 政治的教養教育~選挙権について

 今日は18歳選挙権と高校生について考えてみようと思います。3年生の中には既に選挙権を得ている生徒もいるわけですし、生徒全員が1~2年のうちに選挙権を得るわけですのでとても大事な話です。昨年、この制度が導入されて、その時ちょうど参議院選挙と東京都知事選挙がありましたのでみんなで大騒ぎしましたが、それが終わった途端、ほとんど言う人がいなくなってしまいました。ですから、ここで一度取り上げてみることにしました。

 何のために選挙があるかは明快だと思いますが、私達の未来を自分達の手で選択していくための一番大きな機会です。当然それに関わっていくことは大切なことで、必ず選挙に行って一票を投ずるべきです。しかし、日本では若者の投票率が低く、政治に対し関心が低いと言われています。多分、数字の上ではそうなのだと思いますが、なぜそうなるのでしょうか。関心がないということは、政治が分からないからでしょうか。それとも投票しても何も変わらないと思っているからでしょうか。今までは20歳が選挙権年齢だったわけですが、それを18歳にすれば何が変るというのでしょうか。いろいろと分からないことがありますが、ひとつ面白い考え方をご紹介しておこうと思います。それは、選挙年齢を0歳にまで引き下げて、すべての国民に選挙権を認める、という考え方です。

 当たり前ですが、生まれたばかりの赤ちゃんに判断能力はありませんし、幼稚園生も無理でしょう。なのに何故そんな考え方があるのでしょうか。そこに「選挙年齢問題の本質」が見えるかもしれません。つまり子ども達の選挙権はその保護者に属します。保護者は自分の持つ一票と自分の子どもの一票を自分と子どものみらいのために行使するという考え方です。そうなるとどうなるかというと、私のような年配者の投票にやや偏った現在の選挙の姿が、赤ちゃんも含め全世代の声を万遍なく集められるようになり大きく結果が変るかもしれません。昨年の18歳への年齢引下げは正にこの方向性に沿った動きです。しかし、18歳は赤ちゃんと違って、保護者に任せなければ自分で一票の判断ができない年齢ではありません。真剣に情報を集めれば、誰が自分達のみらいを大切に考えてくれているか、誰が自分達の生命と財産を守ろうとしてくれているか、ちゃんと見抜けるはずです。とても大事なことで、面倒くさがってはいけないところです。若者が大いに声を上げて投票すれば、政治も未来志向になり、若者のことをもっと考えてくれるようになるでしょう。ただし誤解があってはいけませんので、ひとつだけ付け加えておきます。選挙を若者対ベテランの「世代間対立」と考えるのは間違いです。私たちはすべての世代が同時にいっしょに生活しているからです。要するに負担と給付の正しいバランスを全世代が知恵を合わせて考える。諦めずに考える。そういうことが最初の一歩なのではないかと思います。

 ただし、学校は選挙事務所ではありませんから、誰に投票したらいいとか、どの政党の意見がいい、なんて言うことはありません。それは自分でいろんな意見を聴いて判断するものです。投票行動は、人によって違うのですから当然正解もありません。あるのは、自分の判断とその結果をどう自分で受け止めるかだけです。将来何になりたいか、来年どんな進路に進もうと考えるか、生徒たちは自分で選択しているはずで、他人にあてがってもらってないはずです。選挙だって同じことで、生徒たちが自分で選択してその結果を自分で受け止めることになります。生徒たちには、このような選挙制度の基礎基本を理解し、政治的な知識や教養を身に着ける重要性を実感してもらいたいと考えています。

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