平成27年1月8日平成26年度3学期始業式あいさつ

平成26年度3学期始業式あいさつ

今年最初の全体集会です。今年もよろしくお願いします。二学期終業式で、いじめやヘイトスピーチに加担しないために、社会の真実を見抜く力をつけてほしい、そのためにはまず、①ものごとは二極だけではないと知り、②二極以外のところで折り合いをつけ、そして③当然と思えることもそうではないかもしれないと、別の視点で見る習慣をつけてほしいと、話しました。今年最初の集会である今日は、大人になっても学び続けて、真実を見抜く力をつけてほしいという話をします。

本校の学校歯科医の戸堂先生から皆さんに、CD付きの英会話の本を15冊、そしてポータブルのCDプレーヤーを7台寄付していただきました。昨年末は3年生に優先的に紹介しましたが、明日から12年生にも貸し出します。

戸堂先生は、高校時代テニスの試合をしたフィリピンの選手と、試合後会話ができなくて悔しい思いをしたことがきっかけで、大人になって英会話の勉強を始めたものの成果が出ず、でもあきらめないで続けていたら、70歳を過ぎてCD付きの英会話の本とめぐり合い、英語のリスニングに目覚め、昨年はアメリカへの個人旅行で、さらに自信をつけられたとのことです。

長年歯科検診でかかわってきた高石高校の生徒の皆さんにも、同じようなブレークスルーの経験をしてほしいと寄付していただきました。詳しくは戸堂先生のコメントを配布しますので読んでください。

戸堂先生が70歳を過ぎて今なお勉強を続けておられること、これは社会の真実を見つける力をつけることのヒントになると思います。

①英語は苦手だったが、テニスの試合をきっかけに、自ら学ぼうと思ったこと。これは得意なテニスだけに熱中し、苦手な英語の勉強はしない、という二極化の罠にはまらなかったということです。

②なかなか成果が出なくてもあきらめずに続けたこと。これは、成果を出すかあきらめるかという二極以外に、これがだめでも別のやり方でと折り合いをつけたことになります。

③生活のリズムの中に新しい勉強法を取り込んで「やればできる」と自信をつけたこと。これこそ、別の視点での習慣づけです。診療所へ通う途中でCDを聞くという風に、英語のリスニングを生活リズムの中に習慣づけされたことが、ブレークスルーに繋がったのだと思います。

毎日同じリズムで生活し同じ時間に同じことをすること。これが大切です。昨年度までの50分授業週2回7限から、45分授業毎日7限に変えたのは、これと同じで理由で同じ時間に放課後がはじめられるためです。

すでに進路を決めた3年生で、もう勉強しなくていいと思っている人がいます。12年生でも苦手な教科なのか、授業が始まってすぐ、机に突っ伏してしまう人がいます。「勉強する・しない」という二極化の罠にはまっているように感じます。

高校卒業後、77歳の現在まで60年近く、英会話に自分なりの勉強法を探し続けてこられた戸堂先生には到底及ばないにしても、勉強は高校を卒業したら、テストが近づいたらするというのではなく、忙しい学校生活の中で折り合いをつけて学び続けてほしいと思います。そうして若い皆さんが一人ひとり、真実を見抜く力をつけていけば、この国のこれからはきっと大丈夫だと思います。

 私の大学の大先輩で、司馬遼太郎という作家が多くの歴史小説を書いています。「竜馬が行く」が有名ですが、日露戦争を描いた「坂の上の雲」という小説があります。明治の日本という若い国が幸運に恵まれて、大国ロシアに勝利します。ところがこの日露戦争を境に、大恐慌を経て、日本は太平洋戦争につながる暗い時代に突入していくことになります。当時の国民はポーツマス条約に反対するなど、真実を見抜くことができずに、軍国主義を許してしまうことになりました。

 太平洋戦争の敗戦後、高度経済成長という明るい時代を経て経済不況になり、なんとか経済を復興させようとしている今の日本とちょっと似ているのが心配です。同じ失敗を繰り返さないよう、皆さんは真実を見抜く力をつけてください。そのため、ぜひ「坂の上の雲」を読んでほしいのですが、文春文庫で8冊もあります。関川夏央(せきかわ-なつお)という作家が、『「坂の上の雲」と日本人』という評論を書いています。こちらは1冊で当時の時代背景もわかるのでお勧めです。

 12年生は戸堂先生に寄付していただいたプレーヤーを使って、英会話のCDを自習室で声を出さずに勉強して下さい。3年生には1週間本もプレーヤーも貸し出しします。戸堂先生は4月に歯科検診で学校に来られますので、皆さんからもお礼をお願いします。これで終わります。