平成27年度4月8日入学式式辞

平成二十七年度 入学式 式辞 

二・三日前に満開を迎えた本校正門横の桜は、今日を祝うために散らずに耐えてくれています。

本日ここに、大阪府立高石高等学校 第三十九回入学式を挙行いたしましたところ、公私ご多用にも関わりませず、大阪府議会議員、奥田康司様をはじめとして、ご来賓の方々のご臨席をいただき、高い所からではありますが、心よりお礼申し上げます。また、この場をお借りいたしまして、平素より本校の教育に深いご理解とご支援を頂いておりますことに、重ねてお礼申し上げます。

ただいま入学を許可いたしました、新入生の皆さん、高石高校への入学、おめでとうございます。

さて、皆さんへの期待を語るにあたり、まず皆さんにとって、高校で過ごす時間とはどんな時間なのかお話したいと思います。

私は、高校とは、就職する、または大学や専門学校へ進学するまでの、単なる通過期間ではなく、皆さんが大人へと成長する期間だと考えています。特に皆さんには、今までのどの入学生よりも強くそう感じています。というのも、今国会で選挙権年齢を20歳から18歳へ引き下げることが検討されていて、そうなれば、皆さんは「18歳投票」を前提に高校へ入学する、最初の新入生になるからです。

ただ18歳の選挙権が認められたとしても、投票率が上がるとは限らないという声もあります。2012年の衆議院選挙では、20代の投票率は37.9%、60代の74.9%の半分にしかすぎませんでした。またNHKのアンケートによれば選挙権年齢の引き下げにもっとも反対の割合が高かったのは10代とのことです。

なぜ10代は成人として選挙権を与えられることに消極的なのでしょうか。「誰に投票していいかわからない」「自分が投票したって世の中は変わらない」と感じている。つまり、自分が社会になんらかの影響を与えられるという確信が持てない、社会を変えられると実感できる機会がないからだと思います。

でも実は日本で選挙権年齢が引き下げられるのは初めてではありません。昭和20年に25歳から今の20歳に引き下げられたのです。それに比べると20歳から18歳への引き下げは大したことではありません。世界的に見ても、92%の国と地域の選挙権年齢は18歳なのです。だからこれは皆さんにとって、社会に関わっていくチャンスなのです。

平成21年の内閣府の調査では、18歳から24歳のうちで、政治に関心があると回答した人は57.9%、平成10年の同じ調査の37.2%に比べると政治に関心のある若い人は確実に増えています。今の皆さんならもっと関心を持っていると私は思っています。

だから、どうか高校時代に「社会に関わり、自分も影響を与えられる」という実感を持ってほしいと思います。ただし、関わるということは、人との関係に巻き込まれるということでもあり、良かれと思ってしたことに思わぬ反発を受けることがあるかもしれません。関わり続けるというのは、非常にしんどいことなので、ちょっとしたコツが必要です。私は、「とりあえず」と「少しずつ」、そして「ひたすらに」の3つと考えています。

まず、「とりあえず」与えられた枠組みの中でやってみる。そうすると今まで自分が気づかなかったことに興味や関心を感じることがあります。第一段階です。次はそれを「少しずつ」でいいので続けてみる。すぐには大きな変化はないけれど、長く積み重ねていけば、いつか確実に変わったと感じる時が来ます。第二段階です。もちろん、つまずくこともあると思います。でも、たとえつまずいても「ひたすらに」やり続けていると、これはまだまだできない、でもこれならそこそこできるかもしれないと自分を冷静に見つめることができるようになります。関われば変えられるかもしれないと感じることができる瞬間です。

だから、新入生の皆さん、今日から始まる高校生活で、「とりあえず」「少しずつ」、「ひたすらに」取り組んでみてください。そうすれば、たとえわずかでも、影響を与える実感を経験できるはずです。

さて、最後になりましたが、本日の入学式にご列席をいただきました保護者の皆様方、心からお祝いを申しあげます。私たち教職員は生徒の皆さんが大人になる「あとおし」をしていく所存です。そのためにお願いがあります。生徒たちがたとえ現実離れをした夢を抱いても、「少しずつ」でも「ひたすらに」取り組んでいるなら、「とりあえず」ブレーキをかけることを待ってください。というのも、何かに夢中になって取り組んだことは、たとえ夢がかなわず挫折したとしても、その経験は無駄にならないからです。むしろ挫折を自分で乗り越える方法を見つけ、またチャレンジにはリスクがあること、「自由」には「責任」が伴うことを身を持って学んでいくものと信じています。

保護者の皆様方におかれましても、義務教育とは異なる、高等学校の立場を十分にご理解いただきますと共に、学校が意欲的・積極的にお子様方の教育に専念できますよう、また生徒たちのチャレンジに物心両面にわたるご支援・ご協力をいただきますようお願いを申しあげ、式辞の結びといたします。

平成二十七年四月八日 大阪府立高石高等学校 校長 渡邊 和也