平成27年3月13日平成26年度3学期終業式挨拶

3学期終業式あいさつ 150313

おはようございます。今年度最期の集会です。この学年末の集会と4月の年度初めの集会は、この1年間の経験とこれからの1年という時間の両方を持っている二(ふた)学年だけの集会です。私はこの雰囲気が気に入っています。

 さて、この1年、皆さんは本当によく頑張ってくれました。一昨年、皆さんと卒業した先輩は、遅刻の総数を大幅に減らしてくれたのですが、この1年もさらに減らしてくれました。欠席の総数も減っています。体育祭や文化祭への来客の数もこれまでより増えていて、すべて皆さんが頑張った成果です。

 でも、気になることもあります。皆さんと一緒に授業を見学させていただいていると、皆さんのほとんどは、授業に一生懸命取り組んでいますが、一部に机に突っ伏して寝ている人を見かけます。ついうとうとしてしまうことはあります。実は私も高校時代、授業中にうとうとしたことがよくありました。でも、ついうとうとしてしまうのと、机に突っ伏して寝るのとでは、大きな違いがあります。机の上に突っ伏して寝るというのは、授業がわからない、おもしろくない、やる気がしないという意志表示でもあるからです。 

 この問題点は、授業は与えられるものであって、参加するものではないと考えていることです。これは、消費者の行動と同じです。つまり、学校というコンビニで授業という商品を購入しているとしか考えていないということです。

 2年生の皆さんは、昨年、修学旅行で農業体験をしました。1年生の皆さんも今年、場所は違いますが、修学旅行で農業体験を行います。農作物を作って、販売ルートに載せるというのは、生産者の行動で、天候・流通・国際情勢・政治経済などによって、影響を受けます。だから生産者の皆さんは、この国の在りようを常に頭に入れ、いろんな条件を乗り切りながら、それでも品質のいいものを出荷しようと頑張っておられます。それを短いながらも感じることができるので、いい修学旅行だと考えています。

 ところが、皆さんがスーパーマーケットやコンビニで商品を購入するとき、この商品はどんな天候・流通・国際情勢・政治経済状態の下で生産され、ここまで運ばれてきたのか、この国は今どんな状況にあるのかなど、考えることはないと思います。それが消費者であり、自分がこの国の在りようにかかわっているという当事者意識はありません。

 でも皆さんはいつまでも、当事者意識のない消費者でいいのでしょうか。今国会では、2016年夏の参院選で「18歳投票」を実現できるかが焦点となっています。もし実現すれば、まさに皆さんがその最初と二代目の世代になるのです。18歳になれば投票に行って、日本の在りように自分の思いを投じなければなりません。投票すべき政党や政治家がないと思うなら、白票を投じることも一つの意志表示です。当事者意識のない消費者のままであれば、選挙なんてどうでもいい、関係ないと投票に行かないかもしれません。農家が天候・流通・国際情勢・政治経済に影響されることを知った皆さんは、きっと考えて投票してくれると信じていますが、授業で消費者のままの人を見ると、その信頼が少し揺らぎます。

 この国は一度失敗をしています。そして、その失敗で死んでいったのは、まさに皆さんの世代です。そんな失敗はもうあるはずがないと、思っているかもしれません。でも、以前に紹介した、堤未果さんの「社会の真実の見つけかた」(岩波ジュニア新書) には、徴兵制でないアメリカが、中東で戦争を続けるための兵隊をどうして集め続けられるのかが述べられています。そして、今なんとなく、日本がアメリカに似てきているように思えていやな予感がしています。そんな雰囲気を止められるのも皆さんです。

 当事者意識を持ってください。そのためには、考え続けること。授業を大切にすること。もし、それでも授業がわからない、おもしろくない、やる気がしないというのなら、その理由は何かと考えること。

この1年、本当に頑張ってこれた皆さんだからこそ、授業を大切にする意味を判ってもらえると思います。新年度の4月からは、授業中に机に突っ伏して寝ることをやめましょう。それをお願いしたいと思います。