歴代校長からの寄稿

Contributions from past principals

創立30周年祝辞

初代校長 三浦 一二三

 30周年を迎えまことにおめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。 桜花爛漫の校門を入って私が本校に赴任したのは1992年、本校が開校されてから6年目の春でした。「何と美しい学校」というのが第一印象で、教職員の指導が生徒によくゆき届いている様子が窺えました。ご承知のように、本校は府立佐野高等学校日根野校として設立され、今日に至っているのですが、その間副校長として3年、独立後の日根野高等学校の校長として2年、合計5年間在職致しました。

 当時の高等学校は「特色ある学校づくり」、「地域に開かれた学校づくり」が最大の教育課題でしたが、それは、教育委員会の単なるスローガンではなく、意欲に満ちた自主性豊かな本校の教職員の切実な課題でもありました。進取的な教職員と生徒が一体となってこれらの課題を自覚し、実現すべく常に前向きに取り組んできました。このような不断の努力が、後の総合選択制の導入、普通科専門コースの設置校へとつながったものと確信致します。また、PTAや学校後援会の皆様にも精神的、経済的に随分援助を戴き、学校の応援団として、建設的な意見をたくさん頂戴しました。開校以来の教職員、保護者や地域の方々に謹んでここに御礼申し上げます。

 私が在職した5年間の中での一番大きな出来事は、日根野校の独立です。いずれ佐野高等学校本校になるはずだった本校が、府立日根野高等学校として独立したのです。教育委員会の本来の方針が変更になった背景には、上述したように、開校当初からの、教職員の情熱的な取り組みと、それによく応えた生徒を高く評価して戴いた地域住民の熱い思いが強く作用していたように思います。急遽独立ということになって、学校は喜びに沸き返りましたが、独立校としての体をなすにはすべきことが山積していました。まず、校訓、校章、校歌、制服の制定などです。学校の憲法ともいうべき校訓の制定は校長である私の仕事となり、熟慮した末に「自立」「共生」「友愛」と致しました。日本人全体に、個性や人間関係の希薄化が進む中で、自立した人間の結びつきや互いに協力して生きる大切さを訴えたかったのです。校歌や校章等も是非とも自分たちの手で創ろうという雰囲気の中で、全員の知恵を結集して創られたものでした。忙しくても充実した楽しい日々でありました。

 今、少子化の影響のもと、高等学校の統廃合が急ピッチで進んでいます。ちょっと息を抜けば廃校の憂き目をみる厳しい状況です。だからこそ石碑の校訓に込められた「人間の絆」を大切にして精進を続け、地域の方々にさらに親しまれ、愛される学校となることを切に祈念してご挨拶と致します。

編者注:三浦先生は、平成28年2月10日、ご逝去されました。本稿は先生のご遺稿となります。
ここに先生の素晴らしい業績を讃えますとともに、謹んでお悔やみを申し上げます。