1学期終業式を終えて

 1学期の終業式が先ほど終わりました。先週末から続く近年にない高温で、熱中症の危険が高まっています。本校では、「体育館で生徒を全員集めて、冷房の無い中での終業式は危険」と判断して、冷房設備のあるホームルーム教室での終業式にしました。もちろん、ホームルーム教室には短焦点プロジェクターが設置されているので、放送だけでなく、画像も写しながらの終業式でした。どの教室の生徒たちもしっかりと話を聞いてくれたと、担任から聞いています。

 私が終業式で伝えたのは、以下の内容です。

「おはようございます。今週は非常に暑い日が続いており、熱中症の危険が高まっているので、いつもと違う形での終業式となりました。みなさん、自分の席でしっかりと話を聞いてください。私からは二つ、話をします。この間の災害と睡眠についてです。

 まず一つ目。1学期後半は、大きな自然災害が幾つも起きました。6月18日朝に起きた大阪北部地震、まだ避難生活を送っておられる方が90名おられます。そして、先々週に西日本を襲った豪雨。7月1か月分の雨量の倍の雨が短期間に広島、岡山、愛媛を襲いました。この大阪も大雨警報や避難指示が出ました。そして、先週末から続く高温。体調管理には十分気を付けて、熱中症対策が必要です。

 自然災害と言えば、4月の入学式・始業式でも話をしましたが、今から7年前に東北を襲った東日本大震災。その時の被災者の方も言われていたのが、「当たり前だと思っていた日常が当たり前ではないこと」です。

 朝起きて、顔を洗う。朝ごはんを食べて、家を出る。学校につく。友人と話をする。授業を受ける。部活動をする。テレビを見る。音楽を聞く。お風呂に入る。自分の布団で寝る。こういった当たり前のことを自然災害は奪っていきます。当時知り合った方からのメッセージを再度、皆さんに伝えます。

『当たり前の日常に感謝してほしい』

『今を精一杯生きてほしい』

『今しか出来ない事に一所懸命に取り組んでほしい』

 今しかできないことは、部活かもしれません、勉強かもしれません、友人と過ごす時間かもしれません、広島や岡山へボランティアに行くことかもしれません。

 二つめ、これから夏休みに入りますが、夏休みは生活サイクルが乱れて寝不足になる人もいます。そこで、睡眠についてお話をします。

 私たちは夜寝るとすぐに非常に深い眠りに入ります。最初の深い眠りが一番長いことがわかっていて、概ね1時間から1時間半続きます。この深い眠りの際には、成長ホルモンが脳の下垂体から血中に出てきます。この成長ホルモンは、体を強く大きくたくましく成長させるために必要なホルモンです。これは大人にとっても免疫機能を高める役割があります。すなわち病気になりにくい体になるために必要なホルモンです。ただ、成長ホルモンは、夜の10時から短い時間にピークがあるということがわかっています。ですから、夜の10時には深い眠りに入る必要があるということです。病気になりにくい体を作るためには早寝が大切ということです。

 人は誰でも寝ると、深い眠り、浅い眠りを繰り返します。この脳の眠りが浅い状態をレム睡眠、深い状態をノンレム睡眠といいます。レム睡眠時は閉じた瞼の中で目がきょろきょろと動いています。この状態のとき、私たちは夢を見ています。朝起きてみた夢というのは最後のレム睡眠で見た夢です。最後のレム睡眠で覚醒した人だけが、その夢を思い出すことができます。

 このレム睡眠がなんのためにあるのかということは実は長い間、わかっていませんでした。論理的に考えれば睡眠というのは日中に使った心身を休ませるためにありますから、深い眠りを継続したほうが理にかなっているはずですが、なぜか私たちの脳はわざわざ眠りを浅くするという戦略をとっていました。その理由を心理学の先生方が見つけました。それは、脳はレム睡眠のたびに日中に行った学習や活動を整理整頓して記憶に書き込んでいるということでした。運動であろうと勉学であろうと、脳が勝手に復習し、記憶として固定する時間がレム睡眠ということです。8時間睡眠を取ったとします。レム睡眠は6~7回訪れます。夜更しが習慣化して6時間しか寝なかったとしますと、レム睡眠の数が2/3に減るということです。記憶の固定する回数が2/3に減ると言うことです。だから、睡眠時間6時間の人と8時間の人では明らかな差があり、教科によっては20点くらい差がでます。

 睡眠不足による影響を、仙台市の小中学生7万人に調査した結果があります。脳の中央部分に海馬と呼ばれる場所があります。海馬は記憶の脳とも呼ばれて、全ての記憶は海馬を通って脳の中に分散されます。この海馬の体積が睡眠時間と正の関係にあることが、子どもたちの脳の計測でわかりました。睡眠不足の子どもたちは海馬が小さいまま大人になります。現在アルツハイマー病を発症している方は70歳代~80歳代が中心です。これは予測ですが、現在の子どもたちは海馬が小さくなって育っていますので、今後は60歳代くらいから発症するのではないかという予測が成り立ちます。寝ないことは大変なリスクを負うことを知ってください。

 今日は二つ、話をしました。当たり前の日常に感謝して、今を精一杯生きてほしいということ。もう一つは、しっかりと睡眠をとることの大切さ。これからも熱い日が続きます。1年生は、長期の休みにしか体験できないことにぜひ挑戦してみてください。2年生はあぶネットの取組みがありますね。3年生は進路が決まる大切な夏休みです。どうかしっかり体調管理をして、悔いの残らないように過ごしてください。2学期の始業式で、皆さんの素敵な笑顔が見られることを楽しみにして、私からの話を終わります。」