2学期のスタートに当たって

 6月の地震による休校の影響で、阿武野高校では2学期の補充授業の開始が早まりました。2年生3年生は先週20日から、1年生は先週23日から授業が始まっています。皆、元気な姿を見せて登校してくれています。本日27日には始業式を行い、いよいよ本格的に2学期の授業が始まりました。以下が始業式の私の式辞です。

 夏休みは、地震の休校の関係で例年より短い1か月間でした。皆さんはどう過ごしましたか。部活動三昧だった人や補習で毎日勉強していた人も多いと思います。この1か月、いろんなニュースが流れましたが、私が特に興味を持ったのが今月中旬に起きた幼児の行方不明のニュースです。

 今月12日、山口県周防大島町で2歳の誕生日の前の日に、男の子が行方不明になりました。警察や地元の消防団そうががりで探しますが、見つかりません。三日後の16日朝、大分から駆け付けた尾畠春夫さんが無事、男の子を見つけ保護しました。連日、ニュースで取り上げられたので、知っている人も多いでしょう。

 尾畠さんは78歳。小学校の頃に母親を亡くし、中学卒業と同時に鮮魚店で働き、20代後半に大分県別府市で自分の店を持ったそうです。それまでの苦労から「自分が生きて来られたのは、周囲の助けがあったから」との思いで、65歳で店を畳んでからは、第二の人生をボランティア活動にささげます。

 彼の座右の銘が「かけた情けは水に流せ、受けた恩は石に刻め」というものだそうです。もとは仏教の経典から出た言葉(『懸情流水 受恩刻石(情を懸けしは水に流し、恩を受けしは石に刻むべし)』)ですが、良い言葉ですね。

 誰かのために何かをする、誰かを支える、でもそれは水に流して忘れてしまえ。

 誰かが自分の為に何かをしてくれたら、それは石に刻んででも覚えておこう。

 そんな生き方が出来たら素敵だなあと思います。だけど、尾畠さんは、聖人君子ではないでしょう。きっと誰かのために汗をかくと、その誰かから元気を一杯もらえるから、この言葉を座右の銘にして頑張っておられるんだと思います。

 以前、私が岩手に被災地支援に行った時もそうでした。支援に行ったのに、行った先の人からいっぱい元気をもらって帰ってきました。本校のある先生も言われていました。「私も福島県に支援に行っているのですが、その度に現地の人から元気をもらって帰ってきます」。

 そして、もらった元気がさらにがんばろうという気持ちにさせてくれるのでしょう。尾畠さんは、78歳の年齢にも関わらず、毎日8キロのランニングを自分に課して、誰かのために汗をかく日々を送っているそうです。

 さて、誰かのために何かをする。誰かを支えるには、支える皆さん自身が力をつけないといけません。尾畠さんのランニングのように普段から自分の力を高めないと、誰かを支えることは出来ません。

 今、皆さんがすべきこと。それは学ぶことです。いろんなことを学び、自分の力を高め、そして、誰かを支える人になってほしい。そのための2学期にしてほしいと思います。

 3年生はいよいよ進路を実現させる時期です。2年生は修学旅行があります。1年生は初めての高校生活で中だるみしないようにしっかり日々取り組んでください。

 わずか2週間後には阿武高祭があります。そこで皆さんの力を発揮してください。阿武野高校の生徒の皆さんの力を私は信じています。

 この2学期が皆さんにとって、学びの2学期になることを願って、私からの話は終わります。