第34回卒業証書授与式

 一週間前の天気予報ではこの週末は雨模様でしたが、全く雨の心配もなく、無事に第34回卒業証書授与式を挙行できました。生徒諸君も声を出すところではしっかりと声をだし、静かに集中すべき時はしっかりと集中してくれて、本当に良い式になったと思います。式終了後にはサプライズで34期生担任団から卒業を祝うスライドショーが用意されていました。生徒諸君には良いプレゼントになったのではないでしょうか。地元中学校のご代表、地域のご代表の皆様には、来賓としてお越しいただき、本当にありがとうございました。

 学校長式辞では以下のような話をしました。

「まだまだ寒さを感じる今日の気温ですが、暦の上では立春・雨水が過ぎ、春の訪れを感じる季節となってまいりました。34期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、これまで成長を見守ってこられた保護者の皆さまのお喜びもひとしおのことと拝察いたします。心よりお慶び申し上げます。あとさきになりましたが、本日、地元中学校や地域のご代表をはじめ、多くの来賓の皆さまにご臨席いただきました。卒業生の新たな旅立ちをともにお祝いいただきますことを、高いところからではありますが、心から御礼申し上げます。

 さて、卒業生の皆さん、皆さんとは1年間しか時間を共有できませんでしたが、たくさんの元気をもらいました。ありがとう。1学期早々に見せてもらったサッカー部と野球部の試合。地域の祭りなどで素晴らしい演奏を聞かせてくれた吹奏楽部・軽音楽部、いろんな場面でキレッキレのダンスを披露してくれたダンス部、アクティブな活動をしてくれた鉄道研究部。美術部や書道部の高校展も行かせてもらいました。他の部活動も見に行く機会が合わず、申し訳なかったですが、みんなよく頑張ったと聞いています。体育大会ではスポーツ専門コースの生徒の皆さんの演技や各団のダンスパフォーマンス、素晴らしかったです。阿武高祭では、3年生全クラスが素晴らしい舞台を見せてくれました。また、福祉コースの皆さんは笑顔いっぱいに手話コーラスを披露してくれました。ぴあの皆もいい笑顔を見せてくれました。ありがとう。みんな、誰かに支えられ、誰かとつながる中で、素敵な笑顔を手に入れ、今までにない力を発揮してくれたように思います。そこで、この人とつながることについて、二つ話をしたいと思います。

 アメリカのハーバード大学が「グラント・スタディ」という研究を行っています。1938年度の卒業生268名に対し、毎年、健康診断と心理テストを行い、その時の健康状態や経済的な状況、幸福感などの心理状況を調べたそうです。戦争、結婚、離婚、出産、失業、成功等々、様々な角度から卒業生の人生を分析し、「人を幸せにするものは何か」を調べるというもので、75年間に渡って、20億円をかけたというスケールの大きな調査です。研究の中心となったジョージ・バイラント博士が最も強調するのは、「暖かな人間関係」と「健康」と「幸福」には強い相関関係があるということ。つまり、暖かな人間関係を作れている人ほど、人生の後半において、健康の度合いが高く、結果的に経済的にも困らず、そして、人生の幸せを感じているということだそうです。この研究から言えることは、皆さんが阿武野高校で作ったつながり、暖かな人間関係がきっと皆さんを幸せにしてくれるということです。

 もう1つ。1学期の始業式の時にも話しましたが、私は8年前、東日本大震災の被災地、岩手県に約3週間、支援に行きました。被災地には、大阪からも多くの人が支援に来ていて、そこで出会った高槻市の職員さんがこんな事を言われていました。『私の仕事は戸籍や住民基本台帳の復元です。全ての戸籍や住民票の台帳が津波で流されたので、現地の人に聞き取り調査をして、一から名簿を作り直してます。朝の6時には宿舎を出て、8時前には被災地の仮庁舎に入り、夜の11時まで仕事をします。肉体的には大変だけど、誰かの役に立っていると思うと、頑張れます』。他にもたくさんの支援者と出会いましたが、皆さん、『誰かを支えている、誰かの役に立っていると思うと、元気が出てくる』『自分のためなら、こんなに頑張れない。他の人のためだから、頑張れる』と言われていました。そうです、人間は自分のためだけでなく、誰か他の人のために頑張る方がはるかに力を発揮できるのです。

 卒業生の皆さん、皆さんはすでに幸せになるためのきっかけを手に入れています。これから社会に出て、一人一人の進む道が違っても、友だちとの人間関係をしっかり育んでいってください。そして、誰かの役に立ったり、誰かを支えることで、あなた自身も元気になって、今まで以上に成長してください。10年後、20年後、皆さんが誰かの役に立ち、誰かを支え、暖かい人間関係を築き、幸せになっていることを願って、卒業生の皆さんへのはなむけの言葉とします」

 私の言葉は卒業生の皆さんに届いたでしょうか。