平成28年度 始業式あいさつ

              自分で自分を育てること

 

先ほどある生徒と話していて、春休みに一生懸命仕事をしてお金を稼いだと聞きました。自分で働いたお金ですから自由にして良いのですが、「少しは貯金した?」と尋ねると、「全部使った」とのことでした。横にいた彼の友達が、「これこれ!」とゲームソフトを示しました。ゲームといえば、ロールプレイや何かを育てるものが昔からありました。近頃、人との交流によって成長するプログラムがされていた人工知能が、偏った書き込みに影響されて昔の独裁者を賛美したりするようになり、公開が中止されてしまいました。環境が大切ということですが、何とも頼りないことです。

 

さて明治時代に、収入の三分の一を必ず貯金するという信念を持ち実行した人がいました。若いころは収入も少ないので、なかなか難しいことだと思うのですが、30年位たつと、明治期の経済的な発展もあって、欲しいものをいくら買っても使いきれない位、お金が貯まったというのです。うらやましいような話ですが、本当に使いきれない額のお金が貯まるのでしょうか。

私は大切なのはお金の額ではないと思います。この人が作り上げた一番価値のあるものは、生き方だと思うのです。30年間の毎日の生活を通じて、自分が大切だと思うことにお金を使い、そうでないものには興味を持たないなどの生活パターンを身につけたことが価値のあることだと思うのです。その生き方の中で、いくら使っても使いきれなかったのだと思います。

 

先の人工知能には基本になる信念がないので、偏った情報を切り捨てられず、みじめなことになりました。人間は、信念を持つことができる存在です。これは毎日の生き方と結びついて、その人の人生を形づくります。先の人の話が参考になるでしょう。また、毎日の生活がゲームだとすれば、我われはプレーヤーであり、同時にゲームの主人公でもあります。つまり毎日毎日、自分で自分を育てているのです。実際の生活上では、ゲームのような仮想の世界ではないですから、大きな責任がついてきます。何か生き方の芯を持って、責任ある行動をするということが、自分で満足できる人生への大きな条件だと思います。しっかりと生活して行きましょう。