前期末のあいさつ

                         お金を超えるもの  ~ 男気 ~

 期末考査お疲れ様でした。台風による変更もなく予定通り終えました。ただ、台風や地震などの災害に備えて、たとえば学校からの安全な帰り道をいつもの経路の他に、もう一つか二つ、考えておくとよいと思います。

 さて、セリーグで広島カープが25年ぶりに優勝しました。長かった。投手・打撃・守備・走塁にマネジメントを掛け合わせたものがチーム力です。どこかに弱点があれば、普通トレードやFA・逆指名で選手を獲得します。ところが広島は資金面が弱く、出てゆく選手ばかりでした。じっくり育てていたら、駒がそろうまで25年かかったということですが、大学・高校生時代にあまり有名でなかった選手を高水準に育て上げて駒をそろえるということは、奇跡のようなことです。ここしばらくは、広島のセリーグ優勝は私が生きているうちに無理ではないかと思っていました。

 今年印象的な活躍したのが黒田選手・新井選手ですが、二人とも一度は広島を去りました。ところが広島が好きで帰って来たというのです。アマチュアならわかりますが、プロの世界です。本当の理由はなんでしょうか。特に黒田選手について考えましょう。彼は大阪での高校時代、大学でもはじめあまり目立たなかったようです。ただ、コツコツ努力するタイプで、ここを広島のスカウトが高く評価したといいます。やがて広島のエースになりましたが、自分の力を試したい、優勝争いの刺激がほしい、本音にもっと稼ぎたいというのもあったと思いますが、広島を去ることになりました。ただ、広島相手に野球はしたくないということで、アメリカに行くことを選びました。

 しかし野球選手は、なぜアメリカに行きたがるのでしょうか。高いレベルに身を置きたいというのもあるのでしょうが、実は金銭面が大きいのではないかと思います。プロですから。ところで、日本では所得税の最高税率は4000万円以上で45%になります。一方、アメリカでは最高税率は約6千万円以上で39.6%です。例えば年収1億円の選手について、日米では・・(中略)・・の納税額の差がでます。10億円だったらどうでしょうか。金持ちにやさしい、有利な国、貧富の格差が出来やすいのがアメリカです。これは冗談でなく本音ですが、君たちには是非、税金をたくさん払えるようになってほしいというと思います。税金をたくさん払うということは、収入が多いということだからです。

 アメリカで8年を過ごした2015年のシーズン前には、黒田選手はアメリカで20億円での契約がありました。ところが、彼はそれをけって、広島での4億円を選んだのです。プロでは選手の評価は年俸で示されます。なぜ、自分の価値を五分の一に下げてまで、広島に戻ったのか。広島に帰ることが16億円分の価値があることだったというのは、どういうわけか。○○君、どう思いますか?

 この動機を、人々は「男気」と言いました。世の中を動かしているのはお金だけではないことの証拠です。ボランティアもお金以外の目的で働きます。私は人間にはそういう面があるということを、心強く思います。もし、アメリカ的にやれば、20億円手に入れて、何分の一かを、いい選手をとってくださいと、広島に寄付するというような形を取るのではないでしょうか。そうではなく、自分が選手としてまだ働くことができるうちに、広島に復帰したのでした。今回の優勝の喜びは、大きなものだったろうと思います。

 最後に、何かを応援したり、ファンになるということはよいことだという気がします。自分の歩んで来た道・時間を振り返った時に、いつも一緒にいたという存在は大切と思います。「スマップ」が解散するという報道があった時に悲鳴が上がったのは、ファンにとって自分の過去の一部と、これから支えてくれるものが消え去るような気がしたからでしょう。何かこころに大切に思うことがあると、強く生きられ、人生にも厚みを加えることになるのではないかという気がします。