平成28年度 後期終業式 あいさつ

                               通過儀礼

                            ~ 大人になること ~

 先日、卒業式で、18名が晴れ晴れと卒業して行きました。20歳を祝う成人式という行事もありますが、地方自治体が準備してくれ参加するだけです。これに対して自分の努力で勝ち取った高校の卒業はまた、別の重みがあると思います。このような、大人の世界への試練を通過儀礼と言います。

  『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画で、アメリカの高校の卒業パーティーが描かれていました。皆大人の姿、晴れ着で参加するのですが、高校卒業は大人の世界へのデビューです。だから、いじめグループへの教頭先生の「退学させるぞ」という脅し言葉は大変な重みを持つ訳です。「大人への切符をやらないぞ」と言っているのと同じだからです。古き良きアメリカで人々は、こうやって地元の高校を卒業して、地元で就職して経済成長に乗り、豊かで幸せな一生を送っていました。これが今、失われているので取り戻すというのがトランプ大統領の主張です。また、別の形の通過儀礼もあります。例えば、バンジージャンプは、バヌアツでの勇気を試す通過儀礼で、ツタで足を結んで櫓から砂浜に飛び降りるというものです。痛そうですね。足を痛めてしまう場合もあったようですが、ここでは男の主な仕事は漁労ですから 船に座っていればよいわけで影響は少ないです。農耕や狩猟では、足を痛めるかもしれない通通過儀礼はないでしょう。世界各地でいろいろな儀礼が行われています。

 今の日本で、実質的にどういう人が大人なのでしょうか。高校卒業だけでは大人の世界の入り口で立ち往生です。また、高校を中退したり、中学卒業で社会に出てきちんと働き立派な大人になっている人も無数におられます。これも映画ですが、『男はつらいよ』という作品で主人公の寅さんが、「大人になれない大人」の姿を教えてくれています。寅さんは、決まった居場所がない、一所での仕事が続かないという設定です。何度チャレンジしても失敗します。これは喜劇映画だから笑いを取るのですが、見た後何となく寂しい感じがしたものです。逆に言えば、周囲から大人だと言われる人は何かの仕事に打ち込んで、仕事を通じて自分の居場所を確保している人ということになると思います。毎日の仕事ぶりで周りの信頼を得、認められるということです。仕事の種類は関係ありません。しっかりと取り組むことが大切だと思います。一日一日を大切に生活して行きましょう。

 さて私は3年間本校に勤務しましたが、この月末で退職します。今、君たちと過ごした日々が懐かしく思い出されます。強い雨の日、ぬれた作業着からしずくをたらしながら教室に向かって行った生徒や、池に氷が張りつつある寒い晩、白い息を吐きながら「明日は6時から仕事」と急ぎ足で帰宅する生徒の後姿などです。皆、同じ思いで登下校しています。その積み重ねが卒業という形で実を結び、一人一人が豊かな人生を切り開いて行くことを信じています。頑張って卒業してください。皆さんの幸せを祈っています。