平成二十五年度 始業式あいさつ

 おはようございます。この4月1日に赴任した、校長の渡邊です。前任校は大阪市内の我孫子にある阪南高校でした。こうやって、皆さんの顔を見させてもらうと、今や上り調子にある高石高校に転勤してきたのだと、ひしひしと感じます。
 さて、本日出席している新2年生・新3年生の諸君にとって、この始業式は、どんな意味を持つのでしょうか。高石高校に入学して1年次は共通のカリキュラムで過ごしました。2年次3年次と学年が上がるにつれて、卒業後の目標を、徐々に具体化していくことになります。
 そのためにこの始業式は、気持ちを入れ替えて取り組むきっかけとなります。気持ちを入れ替えて取り組むきっかけを「リスタート」と呼びます。リスタートはまったく白紙からのスタートと違って、成功した体験だけでなく、失敗体験も経験値として生かすことができるので、うまく利用できれば、大きく踏み出すことができます。
 スポーツの世界では、リスタートはそれまでの試合の流れを生かして、チャンスを呼び込む絶好の機会です。野球ではフォアボールやデッドボールの後の初球はヒットできる絶好球がくる可能性が高い。サッカーではリスタート(フリーキック)における得点の確立は非常に高い。
 「乗るべき列車は、一度しか通らない」これは、サッカー、アルゼンチン代表のリオネル・メッシ選手が、わずか13歳で言った言葉です。メッシ選手は11歳のとき、ホルモン異常による成長障害にかかり、13歳で身長が143cmしかなかったそうです。彼の家は貧しく、成長ホルモンを注射するための毎月約900ドルの治療費を工面できませんでした。彼は大西洋の反対側にあるスペインのバルセロナというチームのテストを受験し、彼のプレーが素晴らしかったのでバルセロナは治療費の負担を申し出て入団に至るのですが、事情があって家族はスペインで暮らせませんでした。一緒にアルゼンチンへ帰ろうと言う家族に対して、わずか13歳でメッシ選手は一人でスペインに残ることを選択します。そのときの言葉が「乗るべき列車は、一度しか通らない」です。
 この言葉は、人生において勇気を持って決断し踏み出すタイミングは限られていて、逃してはならないということを意味していると思います。皆さんにとって、この始業式というリスタートは、一度しか通らない乗るべき列車がやってくる時期のように思います。始業式からの3ヶ月、夏休みまでを、目標を持って精いっぱい取り組んで下さい。
 ただ、メッシ選手の話で、一つ忘れてはならないことがあります。
 メッシ選手は小さい体でも、毎日一生懸命サッカーの練習をしていました。皆が家に帰った後も、一人ボールを蹴っていたそうです。それはいつかプロのサッカー選手として活躍するという夢をあきらめなかったからです。
 皆さんが高石高校に入学したときに抱いていた夢を、もう一度思い出して下さい。そして高石高校で過ごしてきて、夢をかなえるために皆さんが頑張ってきたこと、或いは失敗したことから経験値として学んだものがあるはずです。それらを生かして一生懸命準備し、思い切って踏み出して下さい。メッシ選手のように、あきらめないこと、つづけること、そしてタイミングをのがさないこと、これらが皆さんを大きく成長させる鍵だと思います。皆さんの充実した1年が、今日から始まることを願って、始業式の言葉としたいと思います。
 ところで高石高校の皆さんを誇りに思う出来事がありました。3月31日、日曜日、午後6時過ぎのことです。道で倒れているおばあさんを助け、救急車を呼び、しかも救急車がくるまで付き添ってくれた人がいます。おばあさんは非常に感謝されていますが、怪我で学校へ来てお礼を言うことができないので、伝えてほしいとのことです。野球部の五人の諸君、立って下さい。おばあさんに代わって礼を言います。ありがとう。皆さん拍手をお願いします。これで終わります。